複雑多岐 ページ46
さすがの不死川と炭治郎も鳩が豆鉄砲を食らったような目で同時にAを見た。
一瞬でその場に音が無くなると、彼女は落ち着き払ったようにこう言い放つ。
「いい加減にしてください。あなた達周りが見えていなかったでしょう?炭治郎も不死川様も、今すぐその拳を下ろしてください。」
彼等の周りには、既に乱闘を止めに入ろうとした隊士達が集まっており、中にはとばっちりを喰らい顔にアザを作るものまで居た。
そんな様子をハッとしたように見た炭治郎は、心底申し訳無さそうな面持ちで縮こまる。
「..すみません」
しかし不死川は、ぐっと息を詰めたもののそう簡単にプライドを捨て去る事はしなかった。
「何で俺がお前に指図されなきゃならねェ。部外者が口出すなと言ったろうが!」
威圧的な声色でAに噛み付く不死川。Aは僅かに怯んだ様子を見せながらも、まけじと叫んだ。
「私は確かに部外者です!でも黙って見過ごせないから、あなた達兄弟がこれ以上すれ違い続けるのを黙って、見過ごせない...。私には、あなた達が本当に仲が悪いとは思えないです。」
「....黙れ」
「不死川様は玄弥君に死んで欲しくないから、だから鬼殺隊をやめろと言うんじゃないんですか?」
「いいから黙れェ!!」
「黙りません!!」
珍しく大きな声を張るAに面食らう人々。しかし彼女は構わず訴えた。
「貴方が本当は玄弥君を思ってやってる事だっていうのも周りにわかって欲しいし、玄弥君が貴方の助けになりたくて頑張ってることも貴方にわかって欲しいんです!」
「...は」
皆はギョッとする。それは突然Aが目一杯涙を浮かべたからだ。あれほど青筋を立てていた不死川も、実際に女性に泣かれてしまっては敵わないようで、酷くたじろいでいた。
周りが慌てふためく中、炭治郎はしばらく茫然とした表情をしていたが、ゆっくり彼女の手を握った。
「すみませんでした不死川さん。殴りかかった事は..謝ります。でも、Aさんは何も悪くない。」
あくまでも暴力を振るった事に対し謝罪をした炭治郎。ただそれはやはり、彼自身が間違った事は言っていなかったと自負している事に他ならなかった。
遠くからハラハラとした気持ちで見つめていた善逸には、炭治郎の複雑な心境が手に取るようにわかる。
ー情けなさ、不甲斐なさ、そして憤り...ー
「俺は、やっぱり貴方の事が嫌いです。不死川さん」
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八千代(プロフ) - ゆるどあさん» 合間見て更新していきたいと思うので、今後とも宜しくお願いします(*´-`) (2022年1月19日 19時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ゆるどあさん» ゆるちゃん最新話まで読んでくれてありがとう!(*´◒`*)まさにゆるちゃんの言う通りもう少し炭治郎は硬派だろうなぁと思ってるんだけど、可哀想になっちゃって結局今に至ります笑 表現とか褒めてくれてありがとうね!なかなか私生活が忙しくなってきたけど、 (2022年1月19日 19時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるどあ(プロフ) - と頷きながら、積極的すぎないか炭治郎!?とかドキドキしながら読ませて貰いました💕相変わらず言葉遣いとかか心の表現の仕方が物凄く綺麗で、素敵で、浄化されるような不思議な感覚になるね笑プライベートとの両立は大変だと思うけど、更新頑張ってね!また来ます! (2022年1月19日 15時) (レス) id: db34c5bdbe (このIDを非表示/違反報告)
ゆるどあ(プロフ) - 八千代ちゃんお久しぶりです!やっっと最新話まで読み終わったよ!!私の予想では(炭治郎の性格的に)無惨様倒すまでは引っ付かないんだろうなぁと思ってたから、ちょっと驚きながらもそうだよな、小さい時から我慢してたんだもんなぁ、寧ろ今までよく頑張ったよ→ (2022年1月19日 15時) (レス) id: db34c5bdbe (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - かりんさん» コメントありがとうございます!(*´-`)いけない関係ってどきどきしますよね。更新頑張りますので、どうぞ今後とも宜しくお願いします! (2021年6月28日 10時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2021年6月10日 20時