星詠みの巫女は太陽と共に【炭治郎夢】ーpart9ー

嵐が止んだ ページ45

「聞いてやってください、お願いします」


必死にそう訴えるA。これで首を縦に振ってくれるかと思いきや、かえって逆効果であったようで、今度はAの方に殺気が向けられる。


「黙れ...知ったような口聞いてんじゃねェ。他人の事情に部外者がいちいち構うな。お節介にも程がある」

「っ...」

「っおいあんた！Aさんは貴方達兄弟の事を思ってこう言ってくれてるんだぞ！失礼だと思わないのか！」


Aが良かれと思って言った言葉は実弥を逆上させ、彼女への態度を見た炭治郎が更に怒り出す形となった。
そこからは完全に乱闘騒ぎだ。
本気の殴り合いをする彼等の中にAが入ることは出来なかった。


ー【他人の事情に部外者がいちいち構うんじゃねェ】ー


実弥に言われた一言が、かなりショックだった。
でも、ごもっともなのだ。
自分もまた訳ありで竈門家に拾われた身であるが故、そういう事を他人に詮索されたり、わかったような顔で代弁でもされたら不愉快な思いをするのかもしれない。
有り難い事に、母さん達が【血の繋がった家族】という体で、ご近所さんは勿論のこと、弟達にさえそう接してくれていたから自分を保てていたのかもしれない。


ーあえて突っ込んだりしない方が、当人達にとって良いこともある...がー



「再起不能になったら玄弥はもう戦えなくなる！そんな事させないっ！あんたが何を考えていようと関係あるもんか！玄弥の道は玄弥に選ぶ権利があるんだ！」

「っ..」



そう...炭治郎はこういう子だ。
他人の事情などクソ喰らえ、誰がどう見ても悪いこと、正しいこと、その判別を如何なる状況であろうとも付けられる子。それは、自分の中に揺るぎない信念があるということだ。

自分よりも明らかに格上の相手だろうが関係なく、違っていると思えば彼は一歩だって譲らない。
彼のその思いが、いままで多くを救い上げてきた。
私は一瞬でも迷ったが、炭治郎は一切を迷わなかった。
そして....気付かされる。


ー不死川兄弟にとっての最善とはなんなのか..ー



殴り合いの喧嘩に発展してしまった現状の中、Aが取ったまさかの行動は..



「あ、え？Aさん？！」


先程Aが置いた井戸水の入った桶に手を伸ばそうとした隊士が驚いたように彼女を見上げる。
Aはごめんなさいと言って桶をむんずと掴み上げるとダッと走り出した。


「「っ？！」」


二人がAの方に視線を向けた瞬間。
バシャンと音を立て冷水が滴った。

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