不器用兄弟 ページ40
兎にも角にも...
この惨状をどうにかしなければと、Aはよいしょと立ち上がる。ぐらりと上体が倒れそうになって慌てて右足を踏ん張った。
なるほど、稽古に容赦はないという不死川の言葉に嘘はなかったようだ。
自分が思ってる以上に体へのダメージは大きかったが、彼女は一人一人の状態を見て周る。
炭治郎は打撲痕や腫れが顕著だったので、布を濡らして冷やしてやった。
次に善逸の元へやってくるといきなりがしりと足首を掴まれる。
「っ!」
「Aさんっ!貴女のようなか弱い女の子がこんな所いちゃいけない。ここ殺されてしまうぅぅ...逃げてください、そしてあわよくば俺を連れて行ってくれぇぇぇ」
気絶していると思っていただけに心臓が飛び出しそうになるくらい驚いた。
「ぜ、善逸君..」
「ほらっ身に染みてわかったでしょう?!あのおっさんは俺達の事人間とすら思っちゃいないんです。気付いたらここに逆戻りになってて絶望しましたよ俺は炭治郎の馬鹿野郎ッ...」
善逸はこの世の終わりのように蒼ざめた顔色で、ぼろぼろ泣き出した。ギャンギャン叫び出したい所だろうが、どうやら不死川が声に気付いて戻ってくる事を警戒しているらしく声を押し殺している。
それくらい恐れを抱いているのだ。
よくよく周りを見ると微動だにしないだけで何人かの隊士は気絶から目覚めていた。
ーそれ程恐れる必要もないと思うけど...ー
そう思うのは自分が多少なりとも男性隊士より手加減されていたからなので、言うに言えずだ。
水分補給すらままならなかったというのに誰一人として井戸へ向かう者すら出てこない。
仕方なくAが動くことにした。
「とりあえず...私皆の水を汲んでくるよ。」
あぁー置いてかないでくださいと呼び止める善逸を申し訳ないと思いながらも無視して、彼女は歩みを進めた。
しかし...
しばらく歩いた所で貧血のような症状に襲われる。吐き気も出てきて、たまらずAはその場に腰を落とした。
「うわ..脱水症状かなぁ..どうしよう」
とりあえず気持ち悪さがおさまるまではと思いじっとしていると、目の前の地面に誰かの靴が見えた。
顔を上げると、そこに佇んでいた人物はやや緊張しながら右手で持っていたものをぐいと差し出してきた。
「だ..大丈夫ですか?これ、飲んでください」
「..玄弥君。助かるわありがとう」
僅かに頬を赤らめ顔を背けたままの彼から、有り難く湯呑みを受け取ると、豪快に中の水を煽った。
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八千代(プロフ) - ゆるどあさん» 合間見て更新していきたいと思うので、今後とも宜しくお願いします(*´-`) (2022年1月19日 19時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ゆるどあさん» ゆるちゃん最新話まで読んでくれてありがとう!(*´◒`*)まさにゆるちゃんの言う通りもう少し炭治郎は硬派だろうなぁと思ってるんだけど、可哀想になっちゃって結局今に至ります笑 表現とか褒めてくれてありがとうね!なかなか私生活が忙しくなってきたけど、 (2022年1月19日 19時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるどあ(プロフ) - と頷きながら、積極的すぎないか炭治郎!?とかドキドキしながら読ませて貰いました💕相変わらず言葉遣いとかか心の表現の仕方が物凄く綺麗で、素敵で、浄化されるような不思議な感覚になるね笑プライベートとの両立は大変だと思うけど、更新頑張ってね!また来ます! (2022年1月19日 15時) (レス) id: db34c5bdbe (このIDを非表示/違反報告)
ゆるどあ(プロフ) - 八千代ちゃんお久しぶりです!やっっと最新話まで読み終わったよ!!私の予想では(炭治郎の性格的に)無惨様倒すまでは引っ付かないんだろうなぁと思ってたから、ちょっと驚きながらもそうだよな、小さい時から我慢してたんだもんなぁ、寧ろ今までよく頑張ったよ→ (2022年1月19日 15時) (レス) id: db34c5bdbe (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - かりんさん» コメントありがとうございます!(*´-`)いけない関係ってどきどきしますよね。更新頑張りますので、どうぞ今後とも宜しくお願いします! (2021年6月28日 10時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2021年6月10日 20時