星詠みの巫女は太陽と共に【炭治郎夢】ーpart9ー

感謝の祈り ページ30

ーありがとうー


そう言ったしのぶの眼は優しい色をしていた。
心のつっかえが取れたのか、こんなにも柔和に微笑む彼女を初めて見たAがひたすらに見惚れていると、しのぶは診療録に文字を書き込み始めた。
そして、おや？と何かに反応する。


「Aさん、来月誕生月なんですね？」

「？あぁ、そうですね。もうそんな時期になりますか。」

「12月22日...年の瀬でお祭りごとも多く活気付いてくる頃ですし、本当はいい時期なんですけどね。無惨戦がいつになるかわかりませんが、無事に迎えられる事を祈ってます」

「はい..ありがとうございます。胡蝶様」



年の瀬...

正直なところ、Aにとって12月は最悪の月となってしまった。
この時期が来る度に、あの忌々しい記憶を思い出してしまう。家族がバラバラになってしまったあの夜を。


でも、確かに誕生日というのは、本来人々にとっては特別な日だ。
12月22日は私が生まれた日。この日は、父さんに拾われて竈門家の一員となった日だ。

竈門家では昔ながらの風習に習って、暮れまでに誕生日を迎えた子供達のお祝いを、まとめてお正月にしていた。
けど私はこの日の夜に、心からその感謝の祈りを捧げる為、決まって両手を天に向かって合わせた。



ー【私を竈門家に引き合わせてくれて、ありがとうございます。神様】ー



あの年だけは唯一、感謝の祈りを捧げる事が出来なかった。
本当に22日を迎える直前、無惨に家を襲われて、その後は色々あったから。日にちの感覚なんて頭からすっぽ抜けてしまって、気付いたら年明けになってしまってた。

確かにしのぶさんの言う通り、今もまた、いつ無惨が攻撃を仕掛けて来てもおかしくない。皮肉にもあの年と似たような状況下にあるのだ。
だが、こればかりは遅かれ早かれやってくる。この決戦は、Aにとって雪辱を果たす機会でもある。
今年もまた、無事に祈りを捧げられるように..


ー【私は戦う、戦って必ず、勝つ！！】ー



ーーー


一方炭治郎は、最近頻繁に採血を行ってるらしい彼女の事を心配していた。
目的は分析の為と、万が一の為に自己血を溜めとかなければいけないから、とは言ってたけど...


「心配だなぁ」


彼女の血は特別な型らしいから、普通の輸血は使えない。自己血を溜めると言うことは、来るべき決戦も近いと、上が警戒している事を意味する。
いつになるだろうか、無惨との決戦は。また、あの夜と同じ頃か。

また...


ー彼女の誕生日を祝えないのか..ー

今年こそは..→←ありがとう

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