星詠みの巫女は太陽と共に【炭治郎夢】ーpart9ー

宇宙と太陽と花 ページ11

カナヲは顔を俯かせて微動だにしなくなった。Aは焦る。何故カナヲにそう思わせたのかわからないが、それは違うと必死に否定する。


「いやいやそんな事ないよ！実際私なんかよりカナヲちゃんの方が女の子らしいし、可愛いし..。私はただ、あの子の近くに居過ぎたってだけだもの。」


そう言うが、カナヲは首をふるふると横に振った。


「炭治郎がAさんのどこに惹かれてるのか、私わかるんです。でもそれは、私には無いものだから...」


カナヲはぎゅっと拳を握り、哀しげに眉を下げた。
確かにAの言う通り、自分は炭治郎に恋心を抱いているのだろうと思う。
彼に会えると思うと心が躍ったし、声をかけられれば胸がドキドキ高鳴った。


ーいつか好きな男の子でも出来たらカナヲだって変わるわよ」ー


今は亡き姉が以前自分にそう言った。本当に少しずつだけど、炭治郎の言葉をきっかけに己の意思をきちんと表現出来るようになってきた。この切ない気持ちは、紛れもなく恋愛感情だった。
だが、彼に惹かれていくのと同時に、Aさんという存在もまたとてつもなく大きいものだったのだ。

彼女は美しかった。Aさんは家族だけじゃなく、誰に対してもよく関心を向けていて、いつの間にかその場のまとめ役になったり、個人の性格や特徴、その時々の感情の浮き沈みなどを配慮した上で、適切な距離感をはかれるようなそんな人だった。自分も含め、恐らく周りの人もそんな彼女の空気感が心地よくて惹かれてる。


そしていつしか、気付けば目で追っていた炭治郎の視線の先には、いつもAさんが居る事に気付いた。


ー【きっと炭治郎はAさんの事が好きなんだ】ー



そう思うのに時間はかからなかった。
ずきりと胸の奥が痛む事は日常茶飯事だった。だって、Aさんに向ける炭治郎の笑顔は、本当に幸せそうだったから。


ーあぁ..私もAさんのようになりたい..ー
ー彼女のように、彼の事を何でも包み込める程の壮大な心の持ち主になりたい..ー


Aの事は尊敬しているし、強い憧れを持っている。と同時に強い劣等感も生まれる。
私が炭治郎のお姉ちゃんだったら、少しは優位に立てたのだろうか？いや..きっと持って生まれた素質なのだ。

【私では太陽(かれ)を包み込める宇宙(そら)にはなれない。
太陽(かれ)の恩恵を受ける花ではあっても...】


悔しいけれど、受け入れなきゃ。


「勝負も何も、私の負けなんですAさん」

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