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満ち足りた幸せ ページ47

はぁはぁと短い細切れの呼吸音。炭治郎は己を急速に(むしば)む毒の気配を感じ取る。


ーまずい..何とか..
呼吸で毒を、毒が回るのを遅らせないと..ー


烈しい目眩に襲われながらも呼吸を必死に正そうとした時、目の前にA姉さんが現れ炭治郎の下顎を手の平で抑え込む。


「大丈夫だからね。死なせないから、私が絶対に」


にわかには信じ難いが、彼女の温もりが徐々に鬼の毒を灼き溶かしていく。
痛みすらもう感じているのかいないのかわからないくらいには、神経がズタボロにされているにもかかわらず、触れられている箇所から暖かさを感じる。

しかし皮肉にも、炭治郎自身の呼吸による血の巡りによって全身に回りつつある毒ばかりは、それでも払いきれない。



あぁ...A姉さんの顔が、(かす)んできたな


今貴女は、どんな顔をしているんだ?

それすらだんだん
わからなく...



はむと唇に柔らかい感触が広がる。
それが、彼女の唇だと気付くのには、不思議とそう時間はかからなかったように思える。

少しの隙間もなく当てられた口。一切漏らす事なく、彼女の息が、肺一杯に入り込んでくる。
全身に暖かさが広がっていくようだ。
なんだか凄く気持ちが良くて、無意識に涙が頬を伝った。


身体はボロボロでも、こんなにも幸せで満ち足りた瞬間が、この世に存在するのかと思った。


あぁでも、なんて勿体無いんだろうって考えてしまう。
よりにもよって、いつもこんな時なんだろう。
血の味はするし、感覚は麻痺してるし、
本当ならもっと味わいたい、彼女の香りも今は...



せっかくの愛している人との口吸いだと言うのに、
この様だ。情けないなぁ...




遠い場所で、宇随さんがこちらに向かって何かを叫んだ。

もう鬼の頚をとったのに、何故そんな焦った顔をしてるんですか?ひょっとして、斬れてなかったですか?..






外の音は凄まじさを増していた。
それに気付いていないAでもなかった。
彼の毒を中和している最中だと言うのに、この期に及んでまだ暴れたらないと言うのか。


Aは炭治郎を守るように上から覆いかぶさった。
最後の牙だと言わんばかりに、四方八方に広がる血の鎌は、炭治郎達を八つ裂きにせんとわななく。



ーでも
貴方達の思い通りにはなってやらないー



どんなに殺傷能力を伴った攻撃であっても、血鬼術である以上は、今のAには効かない。

血鎌はただただ滴り崩れ落ちていった。

禰豆子の炎→←終焉



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八千代(プロフ) - 晶さん» コメントありがとうございます。なかなか時間が取れず更新不定期で申し訳ありませんが、頑張ります! (2020年3月25日 13時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 本当に面白いです。これからも更新楽しみにさせていただきます。 (2020年3月24日 21時) (レス) id: 181b777d16 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - コメントありがとうございます。そう言って頂けるととても励みになります。気ままに更新して行きますのでどうぞ宜しくお願いします。 (2020年3月17日 22時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
月華 - すごく面白いお話ですね。これからも楽しみにしております! 頑張ってください! (2020年3月16日 23時) (レス) id: 05cb836c1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:八千代 | 作成日時:2020年3月15日 8時

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