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香しき花 ページ5

「ふーー...こんなもんか」

やりきったぜとでもいうように汗を拭う動作をする宇随は、傑作とも言える男子、いや..少女3人を、改めて頭から爪先まで一通り見下ろす。
しかし腕を組みうーんと微妙な反応をする、いや、そりゃそうだろわかってたよと善逸は乾いた笑いを零した。


自分の姿は恐ろしくて鏡も見れないが、少なくとも隣の伊之助と炭治郎を見ると、それはもう酷いものだ。
今時流行るのかよってくらい極端な麻呂眉に、化け物じゃないかと思うくらいねっとりと塗りたくられた口紅や頬紅。

元々顔立ちは悪くない、それどころか眉目秀麗な部類に入る炭治郎と伊之助ですらこんな化け物に成り下がるのだから、彼のセンスは皆無に等しい。


「まぁ、地味でいいんじゃねぇか!」


わははと高笑いする彼に、もうどうにでもなれやと思う善逸であった。ところでさっきから気になるが...


「Aさんは?」


そう問いかけると、彼女は流石に男の俺が化粧施したり着付けさせたりは出来ないので、この家の大奥方に任せているという。


「潜入捜査というからには、不本意だが地味な出来で頼むとは言ってあるがな。」


間も無くしてコンコンと戸を叩く音が聞こえ、お嬢さんの身なりが整いましたと恭しくお辞儀する老齢の女性が現れた。


「どうも、入れA」

「...はい、失礼します」



おずおずと姿を現したAを見て、一同は目を奪われた。
それはそれは、美しかった。

宇随の地味に頼むという注文が見事に功を奏していて、口元の紅は控えめに施され、彼女の端正な顔立ちがより引き立っていたし、元々目が大きい彼女は、切れ長な線で化粧される事で妖艶な大人の女性が演出されていた。
老若男女誰もが見ても、美人と称賛するだろう。


炭治郎は、しばらく動く事もましてや言葉を発するさえ出来ずにいた。
いつもの彼女も可愛らしくて好きだけど...
女性は着飾るとこんなにも、美しくなるものなんだ。
まるで突然地上に舞い降りた、天女を目の当たりにした感覚だ。
これは、自分が彼女へ懸想を抱いているからこその贔屓目なのかと思い、3人の反応を見る。

善逸はもちろん、あの伊之助や宇随さんでさえ感嘆の息を漏らしている。


「ほぅー..化けたなぁ。確かに、派手さは抑えられているが...まぁこれはこれで問題ないか。A、お前は客を取ってそいつらから情報を聞き出す専門だ。それにしても」


彼はAの下唇をツーと撫でた。


「俺が客になって買いたいくらいだがな」

少年は空を睨む→←木の葉を隠すなら



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八千代(プロフ) - 晶さん» コメントありがとうございます。なかなか時間が取れず更新不定期で申し訳ありませんが、頑張ります! (2020年3月25日 13時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 本当に面白いです。これからも更新楽しみにさせていただきます。 (2020年3月24日 21時) (レス) id: 181b777d16 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - コメントありがとうございます。そう言って頂けるととても励みになります。気ままに更新して行きますのでどうぞ宜しくお願いします。 (2020年3月17日 22時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
月華 - すごく面白いお話ですね。これからも楽しみにしております! 頑張ってください! (2020年3月16日 23時) (レス) id: 05cb836c1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:八千代 | 作成日時:2020年3月15日 8時

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