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花一匁 ページ11

ー遊郭・繁華街ー


「おい見ろ、京極屋の蕨姫だ。別嬪だなぁ...花魁道中が見れるなんてこりゃあついてる」


「上玉も上玉、悲しいかな、俺達にゃまだ手が届かねぇがな」


ひそひそと聞こえてくる男達の褒め言葉に、蕨姫は気を良くしたように口元に笑みを浮かべる。
庶民の憧れ、高見の花である最高位の花魁である彼女は、自分こそが最も美しく器量良しの遊女であると疑わない。

【人間共】は単純で愚かだ。

この街の人間は、全て見栄と欲望で生きている。
男共は少しその気にさせれば呆気なく堕ち転がす事など容易。
女共に関しては婆達は金で動き、若い女は権力でどうにでもなる。


まさに、この吉原遊郭は、私の為に廻る楽園。
何人たりとも、この楽園の歯車を壊す事は許さない。

なのに....




「確かに花魁は煌びやかで憧れだが、俺はときと屋のあの子がいいなぁ。最近入った..確か名前はAと言ったか。」


「あぁ、いいよなぁあの子。これから贔屓にしようと思ってるんだ俺も。何というか、純真無垢で儚げなんだよなぁ。遊女らしくない素朴さというか、そこが堪らない。」


蕨姫は僅かに殺気を男達に向けて飛ばす。
しかし、一般人の彼等は全くもってそれに気付かない。周りに気付かれぬ加減で、舌打ちする。


最近、よく噂を耳にするときと屋のA。
遊女見習いであるようだが、その人気はここのところ凄まじく、固定客が付きつつあると言う。


蕨姫は許せなかった。
自分以外の女が周りにちやほやされることが、花魁ならまだしもそれが新参者であるというではないか。
千代に培ってきた私の権威が、小娘如きに揺らがされている。そんな事があってはならない。




ー必ず食ってやるわー









Aはいつも通り見世に上がると、早い者勝ちだとでも言うように男達はAを指名する。
中には我先にと大金をはたく者も現れる始末で、呆れ気味に小さく溜息を吐く。

本当に..こんなところ、早く立ち去ってしまいたい



そう思っていた時、硬貨がどっさり入った麻袋を放った男が目の前に現れた。
生まれてこの方、ましてやここに来てからでさえ、こんなに大金の詰め込まれた袋を見た事がなく、目をパチクリさせる。

見ると、Aよりも幾つか上ではあるが、
涼しげな目元が特徴的な好青年が彼女に向かって微笑んでいた。


「あなたを買いたい。是非とも今夜は、僕を座敷に連れて行ってはくれないだろうか?」


彼はそう言って格子越しに手を差し伸べてきた。

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八千代(プロフ) - 晶さん» コメントありがとうございます。なかなか時間が取れず更新不定期で申し訳ありませんが、頑張ります! (2020年3月25日 13時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 本当に面白いです。これからも更新楽しみにさせていただきます。 (2020年3月24日 21時) (レス) id: 181b777d16 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - コメントありがとうございます。そう言って頂けるととても励みになります。気ままに更新して行きますのでどうぞ宜しくお願いします。 (2020年3月17日 22時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
月華 - すごく面白いお話ですね。これからも楽しみにしております! 頑張ってください! (2020年3月16日 23時) (レス) id: 05cb836c1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:八千代 | 作成日時:2020年3月15日 8時

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