帰還 ページ50
結局
昨夜はほとんど寝れずに朝を迎えた炭治郎は、
人知れず長い溜息を吐いた。
朝餉の時も、A姉さんは余所余所しくて
あまり炭治郎と顔を合わせようとはしてくれなかった。
けれど、前に避けられていた時とは少し違う。
彼女から香る匂いは【拒否】ではない。
湯呑みを受け渡す際に僅かに指が触れ合った時、あからさまにびくりとして何でもない風を装う、そんな様子を見て、炭治郎はむず痒い気持ちになる。
ー少しは、意識してくれているのかなー...
そう期待せずにはいられないのだ。
彼女から弟としてではなく、男として見られる事への歓びが、炭治郎の心を安定させる。
彼女はどうも押しに弱い性質があるようだ。
あまり困らせないようにというのは念頭においているけれども、少しずつでいい
A姉さんをその気にさせられたらいいのに...
なんて、贅沢な欲望だろうか。
世話になった若夫婦とその子供に丁寧に礼を言うと、
2人は藤の花邸を後にした。
もう少しで蝶屋敷というところまで差し掛かった時、目の前の光景に炭治郎は絶望する。
見ると、どす黒いオーラを纏った鋼鐵塚さんが以前よりも刃物を増やして待ち構えていた。
そう言えば、炭治郎は刀を鬼に投げ刺した為、柄諸共失くしてしまったと聞いた。
「貴様ぁぁぁ!!!刀を失くすとはどういう料簡だぁぁぁ!!」
奇声をあげながら向かってくる彼から死に物狂いで逃げる炭治郎を見て、前にも目の当たりにした光景に乾いた笑いが漏れた。
「Aさんっ!!」
「!善逸君..」
ひしと抱きついて来る彼は心配したよと泣きべそをかきながら顔をぐりぐり押しつけてきた。
宥めるように頭をよしよしと撫でると、ずびっと鼻を啜りAを仰ぎ見る。
「何もありませんでしたか?置き手紙は見ましたけど、一晩帰ってこないから...。炭治郎は見ての通り日輪刀持ってなくて丸腰だし、禰豆子ちゃんも居ないし、全く...女の子を危険に晒すなんて、とんでもねぇ炭治郎だ」
「ちょっと予定外の事が起きてね、ごめんなさい心配かけて。ところで胡蝶様、怒ってらした?..」
恐る恐るそう尋ねると、善逸はこの世の終わりというような表情でがくがく震え始めた。
「はい、それはもう...。覚悟はしといた方がいいと思います。」
彼の様子を見てAも恐怖からつられるように身体が震え出す。
傷も癒えぬうちに抜け出した事に対して、相当おかんむりである事は予想していたが、案の定らしい。
この小説の続きへ→←ゲスの極み散りぬるを(弐)〜side story〜
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シャドウ&ライト - 推しとの!むいくんとの絡みが多くていい!応援!してます!!(現実ではただの根暗な(他人には隠しているけどそこそこのオタクでもある)やつ) (2020年11月25日 19時) (レス) id: 7ef4dd2d75 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 星月_hosituki_さん» コメントありがとうございます!面白いと言って貰えて光栄です。あと、誤字指摘ありがとうございましたヽ(;▽;)ただいま修正中ですので宜しくお願いします (2020年4月26日 15時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
星月_hosituki_ - 面白いです!突然なのですが、無限列車編で血鬼術が鬼血術になっています。ぁ、一気読みしてきまぁーす!(読んでる途中でコメント書いた人) (2020年4月26日 15時) (レス) id: d71fa0da5d (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - くまくまちゃんさん» 炭治郎夢なんだけれども、無一郎と三角関係です(*´-`) どっちも可愛くて選べませんね (2020年4月15日 6時) (レス) id: 557e2177e8 (このIDを非表示/違反報告)
くまくまちゃん(プロフ) - うぅ~炭治郎も可愛い。う゛ぅ゛~ (2020年4月15日 0時) (レス) id: 5e524d6ee1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年2月23日 14時