哀しき生き物 ページ21
義勇の間合いに入った糸は一瞬でばらけ落ちた。
塁は我が目を疑う。最硬度の糸が破られる筈が...
再度術を繰り出そうとしたが、
気付けば
視界が反転していた。
くそっ殺す..あの兄妹達は必ず‼
憎しみの篭った眼差しで彼等の方を見ると、寄り添うように共に倒れ込んでいた。
あの男、叫び出したい程に傷が痛むだろう。気力で動かせる域はとうに超えている筈。
そんなボロボロの体でも、2人を守らんとして覆い被さっていた。
その光景を見て、塁の中で何かが音を立て崩れ落ちていく。
ー塁は何がしたいの?ー
かつて、寄り集めの家族にそう言われた事があったが、塁は答えられなかった。
どんなに形作ったとしても、虚無は絶えず、
強さを手に入れれば入れる程に、人間だった頃の記憶も薄れていった。
自分が何なのか、何のためにここにいるのか、何をしたいのか...
だから、あの方に言われるがままにするしかない。
それは今思えば逃避でしかなかった。
そうしてどんどん自分の頚を締めていって、
見失っていったのだ。
「自分に負けては駄目」
あの子はそう言っていたなぁ
その意味が、今やっとわかった気がする。
俺は、
かつて自らの手で幸せを壊してしまった罪から逃げ、
その重さに耐えきれずに正当化しようとした。
理想を描く事に躍起になり、
今更罪の重さに気付いても、もう遅かった...
あぁ、ただ..
例え自分が悪いと分かっていても
どうしても父と母の温もりが恋しかったのだ。
ごめんなさい
ごめんなさい
僕が悪かったよ。
泣きながら
最後に、父と母の温もりに触れる事が出来た気がした...
炭治郎は彼から大きな悲しみの匂いを感じた。
鬼とは
人だった頃の彼等は、皆、自分の運命を呪い
救済を求めていただけだったのに
塁の身体が完全に消滅すると、彼の纏っていた着物だけが残った。
それを、義勇の足が踏みつけにする。
助けてくれた人に対してとやかく言う筋合いは無いのかもしれない。けれど、彼のこの行動だけは
どうしても受け入れられなかった。
「足をどけてください...冨岡さん」
彼はしばらく無言で炭治郎を見下ろす。そして口を開こうとした時、炭治郎の手に重ねるように、Aが手を伸ばした。
「っ...A姉さん、意識が...」
息も絶え絶えな状態で、彼女は義勇を見上げる。
「私からも、お願いします..」
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八千代(プロフ) - Sun moonさん» ありがとうございます(*´-`)むいくんは天使 (2020年11月24日 20時) (レス) id: 23228d6fd7 (このIDを非表示/違反報告)
Sun moon - むいくんが可愛い(真顔) (2020年11月24日 17時) (レス) id: 73a4d7a977 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ゆずポンさん» 1話から見直してくださってるなんて...有難いです(;ω;)ありがとうございます!キャラの気持ちの変化だったり意識して書いてみてるので、何か違った発見がゆずポンさんの中であったらいいなぁと思います。 (2020年9月6日 15時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
ゆずポン - 八千代さん» そうですか!今1話から読み直してます。何回見ても面白ですね! (2020年9月6日 15時) (レス) id: 6633b9c75f (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ゆずポンさん» コメントありがとうございます。すみません、炎炎ノ消防隊はアニメ1、2話見た程度で全然詳しく無くて(泣)日本神話の神様なので結構色んな作品に使われてるようですね! (2020年9月6日 14時) (レス) id: 557e2177e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年2月4日 13時