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天秤 ページ1

炭治郎はただただAを優しく抱き締めた。
そしてあわよくば、この焦がれた想いが彼女に伝わるようにと願う。
彼女が抱く炭治郎を思う気持ちと、
炭治郎が抱くAを思う気持ちは、似ているようで決定的に違う。
彼女はきっと後者の意味を想像すらしないのだろう。
そう思うと、酷く虚しく感じた。

数年前に感じたあの重苦しい胸の内に似ている。
想いの天秤は、どちらかに大きく傾いていては、何れ...
きっと重く沈んだ方が満足いかなくなるのだ。
同等の重りを乗せようと躍起(やっき)になるのだ、それは..
絶対に駄目だから、炭治郎は必死に自分を抑え込んでいる。

でもそれは、いつまでなのだろう。




「炭治郎、あなたの気持ちはわかったよ。私もね、ちょうど今回の件で、自分の無力さを思い知った。だから、しばらく別行動しよう」


思いがけないAの言動に炭治郎は数度瞬きした。
しかし、彼女は(うれ)いているでも落ち込んでるでもなく、僅かに微笑みを称えながらそう言う。



「何処にいくんだ。あの、勘違いしないで欲しいんだが、命を(おびや)かす場所に単独で行かせるんでは意味がないんだ。どこか、鬼舞辻達の手の届かない安全な場所へ..」



そう言うと、Aはぷくりと頬を膨らませて炭治郎の額をこつりと叩いた。
予想だにしない可愛らしい行動に、炭治郎は柄にもなく真っ赤になって俯く。



「ごめん、いくら炭治郎のお願いでもそれは保証出来ない。だって、ただ平和的に暮らしてるだけじゃ、鬼舞辻の尻尾も掴めないし、鬼にされた人達をただ黙って見てるだけは出来ない。それに、私は私の使命があるの。」


A姉さんの使命..



「私の能力が人々の助けになるのなら、力になりたい。私にしか、出来ない事があるのなら。なら私はそれを全うしなきゃ、大丈夫、自分を犠牲にとか考えてないよ。だって私には炭治郎達がいるからね。」



ふわりと笑って彼女は炭治郎の頭をなでる。
あぁ...



大好きだ。



「話は済んだか」



バンッと音を立てて愈史郎が部屋に入って来る。
ぎくりと心臓が跳ねる思いで後ろを振り向くと、
あのいつもの呆れ顔で炭治郎を見下ろしていた。



「こういう事には鈍感なやつかと思えば、意外と手が早いんだな」



愈史郎はそう言うと空きベッドのシーツやらを
掻っさらい始める、炭治郎は一瞬頭が追いつかなかったが、何を言われたのか気付き弁解しようとした時にはもう部屋を出ていたのだった。

◆第陸章 不完全なる呼吸の先へ→



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設定タグ:鬼滅の刃 , 竈門炭治郎 , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
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八千代(プロフ) - Sun moonさん» ありがとうございます(*´-`)むいくんは天使 (2020年11月24日 20時) (レス) id: 23228d6fd7 (このIDを非表示/違反報告)
Sun moon - むいくんが可愛い(真顔) (2020年11月24日 17時) (レス) id: 73a4d7a977 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ゆずポンさん» 1話から見直してくださってるなんて...有難いです(;ω;)ありがとうございます!キャラの気持ちの変化だったり意識して書いてみてるので、何か違った発見がゆずポンさんの中であったらいいなぁと思います。 (2020年9月6日 15時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
ゆずポン - 八千代さん» そうですか!今1話から読み直してます。何回見ても面白ですね! (2020年9月6日 15時) (レス) id: 6633b9c75f (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ゆずポンさん» コメントありがとうございます。すみません、炎炎ノ消防隊はアニメ1、2話見た程度で全然詳しく無くて(泣)日本神話の神様なので結構色んな作品に使われてるようですね! (2020年9月6日 14時) (レス) id: 557e2177e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:八千代 | 作成日時:2020年2月4日 13時

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