デート 11 ページ27
驚いたような匂いが彼女から漂ってきて、こっちを見てくる。
それはいたって当たり前の反応だった。突然こんな事されて驚かないわけがないのだから。
今更ながらとんでもない事をやらかしたという自覚はあったが、後悔の気持ちよりも、今この瞬間の心地良さの方が断然優った。
ー(あぁ...A姉さんの温もりだ)ー
滅多に触れる機会なんてない彼女の肌は、きめ細かくすべすべとしていて、男の自分とは正反対の綺麗な手だった。
あまりいやらしい触り方は出来ないので、上から押さえたまま動かさずに、ただ肌と肌が密着する感触のみを味わう。
彼女は俺の手を振り解く事もなければ抗議をする事もなく、しばらくして再び視線を夜空に戻した。
何も口では言わないけれど、ほんのり照れ臭そうな羞恥の匂いと動揺の匂いがしたので、意識してくれているのは確実だと思った。
「...っ」
心臓はドキドキと鳴り響き収まる気配がない。この熱い手の平から脈の速さが伝わってしまいそうなくらいだった。
鼻が利く自分でも、彼女の細かい感情まではわからないし、当然相手にもこの内に秘めた狂おしい程の恋心までは伝わりっこないだろう。
わからないのに、何故彼女はこの状態のままされるがままで、微動だにしない。
ー嫌ではないということか?
期待してもいいということだろうか?
A姉さんは今、どんな思いでいるのか...?ー
わからないのがかえって、自分に都合の良い想像に拍車をかける。
ひょっとしたら、押したらいけるのではないか?
男として、ぐっとA姉さんへの距離を縮められるのではないか?
彼女が俺の事を異性として意識してくれる可能性が少しでもあるならと心は調子に乗ってしまいたくなったが
【嫌われるのだけは...嫌だしなぁ】
炭治郎の性格上、理性が少しでも働いているうちはなかなかこれ以上体を動かす事は難しかった。
例え本能がもっと近付きたい、もっともっと触れたいとしきりに叫んでいても。
俺はもう15歳の高校生で子供でもない。言い訳が通用する歳でもない。
少しでも早まれば、取り返しのつかない心の距離が生まれてしまう。
(あぁ...この夢のような幸せな一時が終わってしまったら、姉さんにどんな顔を会わせよう)
仕方ない、少し無理はあるかもしれないけど、効き過ぎた冷房のせいにでもしようか。
炭治郎はそうぼんやりと考えていた。
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年12月17日 23時