貴女の道標となりたい ページ50
「...Aさん」
「そしたら、もっと近道ができるかもしれないのにね...。きっと、ここに来て柱稽古が始まったのも、私達二人を鍛錬させるのも、時間が無いんだよ。もしかしたら、私達が知らないだけで無惨戦も近いのかもしれない。私は、貴方を守りたいの。巫の能力が鍵となるなら悠長な事はやってられないのに
「Aさん」
「!」
炭治郎は落ち着かせるようにぎゅっと彼女の両手を包み込む。ハッとして瞳を揺らしたAに対し、炭治郎は冷静に語りかけた。
「俺も、貴女のように考えた事がある。Aさんや禰豆子達が傷付く度に思う。父さんが生きているうちに、もっとヒノカミ神楽についてたくさんの事を学んでおけば良かったと後悔していた。でも、死者と言葉を交わす術は無いんだ。確かに今生きてる俺達は、限られた知識と経験しかない、だから...努力するしかない。」
「...」
「貴女は一人じゃない。俺がついてる。禰豆子や善逸、伊之助達もいる。それに、言葉を交わせなくても日寄さんはAさんの中で生き続けていると思うよ。何となく、そんな感じがするんだ。」
「そっか..そうだよね。
うん...慰めてくれてありがとう炭治っ」
彼女の言葉は、彼に抱き締められる事で不自然に途切れた。突然の抱擁にどきまぎするAに構わず、炭治郎は己の本音を溢し始める。
「貴女を守りたいと思うのは俺も同じだ。それは鬼からだけじゃなくて、貴女に...課せられた一族としての使命からもだ。確かにAさんにしか務まらない事があるだろう。その代わり、俺が全力で支えたい。力になりたいんだ。
こんな事を言うと、矛盾してると思われるかもしれないが、巫一族の生き残りとして使命を全うしようとするAさんは最高に格好良いと思うよ。でも、俺の前では普段通りの貴女で居て欲しい。自分を...見失ってしまわないように」
ーよく皆はこう言ったー
俺が彼女に惚れたのは当たり前だと。日が星に惹かれるのは当然なのだからと。確かに全く的外れだとは思わないけど...
でも俺...そう言われるの、ちょっと嫌だったな。
だって、俺が好きになったのは【Aさん】だったからなのに、そんな言い伝えにこの想いを簡単に片付けられてしまうのは、ごめんだ。
「俺をここまで導いてくれた事に、感謝しています。今度は俺が、貴女の手を引いて行きますから。だから..安心してください」
炭治郎はそう言って微笑むと、泣きそうに顔を歪めるAの頭を撫でた。
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八千代(プロフ) - あいさん» リアルの日常とても辛い思いをされてるのですね..私の作品が少しでもあいさんの普段の楽しみになれたのならこんなに嬉しい事はありません。私こそ暖かいコメントに勇気とモチベを貰えました笑ありがとうございます! (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます(*´-`)何度も読み返してくださってるなんて光栄です!亀更新で本当申し訳ないのですが、私も思い入れのある作品なんで、頑張って書きます!ありがとうございます!冨岡さんの夢は初挑戦ですが星詠み終わったら検討いたしますね(*^^*) (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 続き→冨岡さん落ちの夢小説も読んでみたいです!あくまで個人的な希望なので無理せず、ご検討よろしくお願いします!私は精神障害で親からの当たりも酷くて毎日死ぬほど辛い状況ですが、このお話を読んで少し元気をもらいました。ありがとうございます! (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - こんばんは!このお話とっても面白いですね!既に5回くらい読み返してます!そのくらい好きなお話です!更新を楽しみにしています!これからも、頑張ってください!応援しています!個人的な希望なのですが、このお話が終わったらでもいいので、八千代さんが書いた、 (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 花霞さん» 良かったです(^^)ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年12月7日 18時) (レス) id: 23228d6fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月30日 22時