逆効果 ページ40
彼の格好を見ると、どうやら風呂に行く途中だったが偶然この場に出会したといったところだろう。
そして、その表情を見るに一部始終を聞かれていたのは間違いない。
ただでさえ気まずいにもかかわらず、雛鶴達は後は若いお二人でとでも言いたげにそそくさと去って行ってしまった。
「...」
「...」
僅かに沈黙が流れた後、炭治郎はゆっくりとAの元へと近づいていく。
羞恥に顔を俯かせていた彼女へと、言葉が投げかけられた。
「Aさんは、俺のそういうところに惚れてくれたんだな。嬉しい...。貴女の口から好意の言葉をちゃんと聞けたのがもの凄く嬉しいです。」
そっと顔を上げれば、炭治郎は心底幸せそうなはにかんだ笑顔を浮かべていた。思えばいつも言葉にして伝えてくれていたのは炭治郎ばかりで、Aからはなかなか照れ臭く言えずじまいだったのだ。
しかし、それがこの間の一件のようなすれ違いを生んでしまうのなら正さなければと反省した。
ー私の心の声を、正直に炭治郎へ...ー
「...私、さっき言ったことも勿論嘘じゃないけど、それだけじゃないよ。貴方の好きなところはまだまだたくさんある。」
「...っ」
「炭治郎が思ってる以上に私は貴方の事が大好きだからね。あまり不安にならないでいいよ。確かに、他の異性と話してたりしたら嫌だよね。ごめん。私も、炭治郎が他の女の子と楽しく話してたら嫌だもの。私の炭治郎なのにって、嫉妬しちゃうと思う。だから...もうこの前みたいにお酒飲み過ぎたり無茶しないでね?貴方の体が心配だから」
「..ぅぅ....Aさんッ..」
彼は感極まったように顔を歪めると、小脇に抱えていた手拭いを放り出して、ひしとAに抱き付いた。
「好きです。好き好きッ...大好きです!」
「っ//!...炭治郎、誰か来ちゃうかもしれないから」
「ごめんなさい。でもッ...止まらないです。もう少しだけ、この溢れた気持ちを吐き出させて」
Aはふぅと息を吐いて、彼の背中をぽんぽんとあやすように叩いた。感情が昂ったりした時に、昔から炭治郎にしてやる行為だった。
これをすると安心するのか、徐々に体の力が弛緩していき落ち着きを取り戻す。筈だったのだが...
急にばっと体を離し距離をとる炭治郎。若干前屈みになっているため少し上目遣い気味にAを見るその眼は、遠い昔の記憶とは存外かけ離れたものだった。
「それ..駄目だ、逆効果だよAさん.」
落ち着くどころか、止まらなくなりそう
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八千代(プロフ) - あいさん» リアルの日常とても辛い思いをされてるのですね..私の作品が少しでもあいさんの普段の楽しみになれたのならこんなに嬉しい事はありません。私こそ暖かいコメントに勇気とモチベを貰えました笑ありがとうございます! (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます(*´-`)何度も読み返してくださってるなんて光栄です!亀更新で本当申し訳ないのですが、私も思い入れのある作品なんで、頑張って書きます!ありがとうございます!冨岡さんの夢は初挑戦ですが星詠み終わったら検討いたしますね(*^^*) (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 続き→冨岡さん落ちの夢小説も読んでみたいです!あくまで個人的な希望なので無理せず、ご検討よろしくお願いします!私は精神障害で親からの当たりも酷くて毎日死ぬほど辛い状況ですが、このお話を読んで少し元気をもらいました。ありがとうございます! (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - こんばんは!このお話とっても面白いですね!既に5回くらい読み返してます!そのくらい好きなお話です!更新を楽しみにしています!これからも、頑張ってください!応援しています!個人的な希望なのですが、このお話が終わったらでもいいので、八千代さんが書いた、 (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 花霞さん» 良かったです(^^)ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年12月7日 18時) (レス) id: 23228d6fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月30日 22時