話をしよう ページ36
「浮気者だなんて...失礼な事言ってごめんな。貴女に下心がない事はわかってるのに、俺が...気にしすぎなんです。」
あぁ、またそうして自身を責めてしまう。
俺が...決まってそう言ってしまうのは炭治郎の口癖だ。彼が自分を責める必要はない。
だって、炭治郎のせいじゃないのだから。悪い事なんてこれっぽっちもしてないのだから。
こうして嫉妬してくれるのは、正直言うと嬉しいものだ。それだけ好きでいてくれてると思うと、とても愛らしく思う。
けれど...これは少なくとも炭治郎にとっては、悪い影響でしかない。愛憎は人の身も心も滅ぼす。
ー私は、彼より優位に立ちたいわけでもなければ、支配したい訳でもない。
ただ...緩やかで幸せなひと時を、彼の隣で一緒に過ごせたらいいなと思うだけだ。彼の辛そうな顔は見たくない。心から笑った顔が一番好きなのは、私も同じだー
だから...
「炭治郎」
「?..ッえ、ちょっ」
ぎゅっと彼の体を包み込むように真正面から抱き締める。顔を真っ赤にしてあたふたする炭治郎を射止めるように見つめると、やがて少しずつ顔と顔の距離が縮まっていく。反射的に目を瞑った炭治郎の唇を掠めるように捕らえ、はむはむと啄むような口付けを交わす。
予想だにしなかった彼女の行動に炭治郎はされるがままとなり体を硬直させながらも、懸命にAから施される行為に応えようとする。
次第に、とろんと目尻は下がり顔や体の筋も比例し緩んでいく。気持ちよさそうな吐息を漏らす。
「っふ...ぁ..」
「.....っ」
永遠に続くかと思われた口吸いも、Aが唇を離した事によりようやく終わりを告げた。しかし炭治郎の方は、まだし足りないとばかりに名残惜しそうな瞳を向けてくる。
「....ぅ...あの、A姉さん」
「ねぇ炭治郎。少し話がしたいの」
「?はい..」
「やっぱり...私達が恋仲にある事、皆に話そうか」
唐突なその提案に炭治郎はポカンと口をあけたまま固まっていた。そして数秒後、ようやく意味を理解すると彼はぐっと口を噤む。
「本当は周りにも色々と影響するかもって、全てが終わるまでは内密にしておこうと思ってたけど。貴方が不安な気持ちを抱えたり、辛い思いをするくらいなら。炭治郎もその方が安心するでしょう?」
Aがそう提案すると、炭治郎はしばらく考え込んだ後こう語り始めた。
「うん。気使わせてごめんな...貴女が俺のだって堂々と言えたなら、多分こんなに辛くないと思う」
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八千代(プロフ) - あいさん» リアルの日常とても辛い思いをされてるのですね..私の作品が少しでもあいさんの普段の楽しみになれたのならこんなに嬉しい事はありません。私こそ暖かいコメントに勇気とモチベを貰えました笑ありがとうございます! (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます(*´-`)何度も読み返してくださってるなんて光栄です!亀更新で本当申し訳ないのですが、私も思い入れのある作品なんで、頑張って書きます!ありがとうございます!冨岡さんの夢は初挑戦ですが星詠み終わったら検討いたしますね(*^^*) (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 続き→冨岡さん落ちの夢小説も読んでみたいです!あくまで個人的な希望なので無理せず、ご検討よろしくお願いします!私は精神障害で親からの当たりも酷くて毎日死ぬほど辛い状況ですが、このお話を読んで少し元気をもらいました。ありがとうございます! (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - こんばんは!このお話とっても面白いですね!既に5回くらい読み返してます!そのくらい好きなお話です!更新を楽しみにしています!これからも、頑張ってください!応援しています!個人的な希望なのですが、このお話が終わったらでもいいので、八千代さんが書いた、 (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 花霞さん» 良かったです(^^)ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年12月7日 18時) (レス) id: 23228d6fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月30日 22時