茜色の予兆 ページ4
鋼鐡塚は鍔を受け取ると、太陽光に
その手つき目つきは職人さながらで、Aも炭治郎もその光景を固唾を飲んで見守る。
「よし、今は錆び付いてるが研磨すれば元通りに近い状態に戻るだろう。それに、籠目模様の鍔は巫一族の剣士の証だ。これは実に鉄の質がいい..刀身もそれ相当のものだったに違いない。素晴らしい!」
(そんな特別な刀だったんだ...父さんの刀は)
「あぁ...その、刀身は残念ながら根本からぱっきり折れてて、辺りも探したが見つけられなかった。Aさっ...姉さん。すまない」
炭治郎が俯き加減でそう告げた。慌ててAは首をふるふると左右に振る。
炭治郎が気負う必要などない。寧ろ感謝してもしきれない。本当はこの闘いが終わったら、自ら探しに行こうと思っていた。
二枚舌だったあの鬼の言う事の、どこまでが真実だったかもわからない、そもそも根拠もなかった。
それでも構わなかった。Aは実の親の面影を求めて、あの山へ還るつもりでいたから...
「何であなたが謝るの?私は、これを見つけてきてくれただけで、それだけで十分よ炭治郎。本当に嬉しかった。あなたが居なければ、私は父さんと再会を果たせなかったかもしれない。だからね、会わせてくれてありがとう。」
弾けるような笑みを浮かべて彼女は炭治郎の手をぎゅっと握り締める。それを受けた彼は一瞬どきまぎとしつつも、次第に顔全体を緩ませていった。
「うん、どういたしまして。A姉さんが喜んでくれたなら、それだけで俺も満足だ。」
和やかに笑い合っていると、こほんと横で鋼鐡塚さんが咳払いをする音が聞こえ、二人はハッとなる。
気のせいか、あまり機嫌が宜しそうではない。
Aも炭治郎も慌てて互いに距離を取り、気まずそうに目線を逸らした。
「とにかく、これはしばらく俺が預かり受ける。3日もあればいい」
「はい、宜しくお願いします!」
ちょうどAもあと1週間弱もすれば通常の生活が出来るようになるとしのぶから言われており、時期に鍛錬への参加も認められていた。
鋼鐡塚と別れると、Aはくるりと炭治郎の方へ向き直る。
「炭治郎はいつから柱稽古に参加するの?さすがに今日はもう夕方だし、明日以降かしら?」
「そうだな..うん」
炭治郎は節目がちにそう呟くと、意を決したように彼女を見据えた。
「今夜、話したいな。二人きりで...」
172人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
八千代(プロフ) - あいさん» リアルの日常とても辛い思いをされてるのですね..私の作品が少しでもあいさんの普段の楽しみになれたのならこんなに嬉しい事はありません。私こそ暖かいコメントに勇気とモチベを貰えました笑ありがとうございます! (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます(*´-`)何度も読み返してくださってるなんて光栄です!亀更新で本当申し訳ないのですが、私も思い入れのある作品なんで、頑張って書きます!ありがとうございます!冨岡さんの夢は初挑戦ですが星詠み終わったら検討いたしますね(*^^*) (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 続き→冨岡さん落ちの夢小説も読んでみたいです!あくまで個人的な希望なので無理せず、ご検討よろしくお願いします!私は精神障害で親からの当たりも酷くて毎日死ぬほど辛い状況ですが、このお話を読んで少し元気をもらいました。ありがとうございます! (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - こんばんは!このお話とっても面白いですね!既に5回くらい読み返してます!そのくらい好きなお話です!更新を楽しみにしています!これからも、頑張ってください!応援しています!個人的な希望なのですが、このお話が終わったらでもいいので、八千代さんが書いた、 (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 花霞さん» 良かったです(^^)ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年12月7日 18時) (レス) id: 23228d6fd7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月30日 22時