吐露 ページ21
名残惜しくも彼女と別れた炭治郎は、屋敷の廊下をてくてくと歩いていた。
秋も段々と深くなり、朝は空気がひやりとしていて足先が冷たい。
睡眠時間は数時間程度だったけど、A姉さんの側で抱かれて眠っていたら、どうやらかなり熟睡していたらしく思ったより頭はすっきりしていた。
「あ..」
通りがけに台所を覗くと、既にアオイさんが朝食作りに取り掛かっていた。背を向けてトントンと規則正しいリズムで包丁を叩いている。
「おはようございます。アオイさん」
「おはようございます炭治郎さん。今日から柱稽古に参加されるんですね。朝食は貴方の分は先に取り分けて置きましたので、どうぞ召し上がってください。白米は今よそいますから」
彼女は割烹着の端で手を拭うと、台の上に置いてあるお盆を指さした後、釜の方へと移動した。
「ありがとうございます!」
ぺこりと頭を下げた後、しばらくアオイの方を見つめる。彼女は何を聞いてくるでもなく、黙々と作業していた。
ー昨日俺がAさんの部屋に行ってたのは..バレてなさそうだなー
少しだけ、それが気にはなっていた。
一晩中俺が不在だったのが誰かにバレていたら、まず間違いなく居場所を探されていたろうから。
言うなれば夜這いのようなものだ。今更ながら気恥ずかしくなってくる。
だが、アオイの反応を見るとそれは杞憂と判断してよいだろうと思う。最も、知らぬフリをされていたらわからないけれど..
とにかく、何も踏み込んで来ないのは助かる。
「あの、部屋で食べてきてもいいですか?行儀が悪くてすみません。でも禰豆子と一緒にいられるの、今日までなので。柱稽古に参加したらしばらくは会えないと思うから」
ダメ元でお願いしたら案外あっさり了承してくれた。
炭治郎は再度礼を述べると、湯気のたつお盆を持って足早に禰豆子の待つ部屋へと向かう。
中へ入ると禰豆子はまだベッドで夢の中だった。
太陽を克服してから、朝日が差す場所にもいれるようになった。
だから、最近の禰豆子のお気に入りは専ら陽溜まりの中だ。すやすやと眠る妹を見ていると、心が安らぐ。
「ただいま禰豆子。昨夜は一人にしてごめんな。」
未だ彼女が目を覚さないのをいいことに、炭治郎は朝食を頬張り、ポツリポツリと話し始めた。
「聴こえてなくても構わない。理解出来なくてもいいから、お前に聞いて欲しい事があるんだ禰豆子。兄ちゃんな、A姉さんの事が好きなんだ」
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八千代(プロフ) - あいさん» リアルの日常とても辛い思いをされてるのですね..私の作品が少しでもあいさんの普段の楽しみになれたのならこんなに嬉しい事はありません。私こそ暖かいコメントに勇気とモチベを貰えました笑ありがとうございます! (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます(*´-`)何度も読み返してくださってるなんて光栄です!亀更新で本当申し訳ないのですが、私も思い入れのある作品なんで、頑張って書きます!ありがとうございます!冨岡さんの夢は初挑戦ですが星詠み終わったら検討いたしますね(*^^*) (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 続き→冨岡さん落ちの夢小説も読んでみたいです!あくまで個人的な希望なので無理せず、ご検討よろしくお願いします!私は精神障害で親からの当たりも酷くて毎日死ぬほど辛い状況ですが、このお話を読んで少し元気をもらいました。ありがとうございます! (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - こんばんは!このお話とっても面白いですね!既に5回くらい読み返してます!そのくらい好きなお話です!更新を楽しみにしています!これからも、頑張ってください!応援しています!個人的な希望なのですが、このお話が終わったらでもいいので、八千代さんが書いた、 (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 花霞さん» 良かったです(^^)ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年12月7日 18時) (レス) id: 23228d6fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月30日 22時