本音を言うなら ページ3
まるで時が止まったかのような空間の中で、二人は至近距離で見つめ合う。
そしてその距離は、どちらからともなく惹かれゆく事により徐々に縮まっていった。
そんな状態だから、それ以外の気配など気づくはずもなかった。
ー実際に第三者の声が割って入るまでは...ー
「おいっ!!」
「「ッッ!!」」
反射的に体を引き剥がし何でもないフリをしたのはA、炭治郎はと言うと彼女にぐいっと押しのけられた状態で顔を反対方向を向けさせられた。
内心パニック状態の二人の元へ駆け寄って来たのは、概ね傷は癒えたものの、度々蝶屋敷で治療にかかっていたらしい鋼鐡塚であった。
彼は興奮気味に、だが心底嬉しそうな声色でこう発する。
「聞いたぞ!A、父親の日輪刀が見つかったってな!炭治郎が探してくれたんだっ....どうしたお前ら、二人して地に尻餅ついて」
「ぁ!これは、私が転びそうになった所を炭治郎が支えてくれて、何でもないんです!」
Aはぶんぶんと顔の前で両手を振る。苦し紛れの言い訳であったが、鋼鐡塚はふーんと首を傾げただけだった。
相手が良かったようで、どうやら大した不信感も与えずにこの場を切り抜けられたらしい。
一方、あははと笑ってごまかすAを見た炭治郎は、敢えて少しむくれた表情を見せる。
確かに、恋仲になった事実は周りに内密にすると約束し合ったから、彼女の反応は自然と言えば自然なのかもしれないけれど
(こんな徹底的に隠さなければいけないなんて)
ーせっかく良い雰囲気だったのに...ー
言い出したのは自分である事をすっかり棚に上げ、炭治郎は口を尖らせた。
勿論、約束は約束だから他言するつもりは一切ないが
、今後彼女に言い寄る悪い虫が出ないとも限らないから、
そんな気持ちも正直無くはない...。
(こんな事今更Aさんには、言えないけれど)
そんな炭治郎の複雑な心中を他所に、鋼鐡塚は彼らに対して話を続ける。
「その鍔、お前の日輪刀に付け替えてやる」
「え、いいんですか?!」
問題ない、寄越しなと言う彼の手に、彼女は嬉しそうに顔を綻ばせながら炭治郎から受け取った鍔を渡した。もやりとした心も、そんなAの顔を見たら何処かへ消え去り、炭治郎はゆるりと口元に弧を描いた。
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八千代(プロフ) - あいさん» リアルの日常とても辛い思いをされてるのですね..私の作品が少しでもあいさんの普段の楽しみになれたのならこんなに嬉しい事はありません。私こそ暖かいコメントに勇気とモチベを貰えました笑ありがとうございます! (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます(*´-`)何度も読み返してくださってるなんて光栄です!亀更新で本当申し訳ないのですが、私も思い入れのある作品なんで、頑張って書きます!ありがとうございます!冨岡さんの夢は初挑戦ですが星詠み終わったら検討いたしますね(*^^*) (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 続き→冨岡さん落ちの夢小説も読んでみたいです!あくまで個人的な希望なので無理せず、ご検討よろしくお願いします!私は精神障害で親からの当たりも酷くて毎日死ぬほど辛い状況ですが、このお話を読んで少し元気をもらいました。ありがとうございます! (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - こんばんは!このお話とっても面白いですね!既に5回くらい読み返してます!そのくらい好きなお話です!更新を楽しみにしています!これからも、頑張ってください!応援しています!個人的な希望なのですが、このお話が終わったらでもいいので、八千代さんが書いた、 (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 花霞さん» 良かったです(^^)ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年12月7日 18時) (レス) id: 23228d6fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月30日 22時