果たすべき約束 ページ2
「炭治郎...わざわざ雲取山に帰って、見つけてくれたの?」
Aが未だ信じられないというような眼差しで炭治郎を見つめるが、彼は力強く首を縦に振った。
「貴方のご両親が、どんな生き様だったのかを知ったから、どうしてもこれを探して渡してあげたかった。見つかる可能性なんて無いに等しい事はわかってたんだけど、それでも行動に移さなかったら一生後悔すると思ったんだ。
でも良かった...奇跡って本当にあるのかもしれないな。それか、Aさんのお父さんが、自ら俺に居場所を教えてくれたのかもしれなっ...
炭治郎は驚いたように目を見開くと咄嗟に腕を大きく広げた。そこへ松葉杖を放り投げたAが勢いよく飛び込んだ。
「っ...」
彼女はうわぁんと声を上げながら、炭治郎の羽織をぎゅうっと掴む。ただ何度も、ありがとうと繰り返し彼の胸の中で涙を流した。
そんな彼女を前に、炭治郎もまた愛しさがこみ上げ、小さく震える体を優しく包み込むように腕を回す。
「約束したから、貴女のご両親は俺が探すと。だからせめて...魂だけは返してあげたかったし、繋いであげたかった。この鍔はきっと、Aさんを守ってくれるよ」
炭治郎は穏やかな声色でそう伝えた。
確かに、前にそんなやり取りをした事があった。
例えAの父と母が、既にこの世を去っていたのだとしても、彼にとっては【果たすべき大事な約束】だったのだ。
ー覚えてくれていたんだ...ー
「炭治郎」
「ん?」
「ありがとう」
「うん」
「..炭治郎」
Aはぽすんと彼の胸板に顔を
「好きよ」
その瞬間、心臓が鷲掴みにされたようにきゅっと窄まる。
彼女の口から【この言葉】を聞く事は、炭治郎にとって果てしない幸福感を生み、満ちゆく充足感を感じさせるものであった。
堪らず胸元から引き離し、その愛しい顔を間近に見つめる。本当にぽろりと出てしまった言葉のようで、言った本人は耳の付け根まで真っ赤にしながら驚きに身を固めていた。
しかしAは、否定もはぐらかしもせず炭治郎をじっと見つめ返す。
あぁ....もう、覚えた。
Aさんがするこの表情..この匂いは...
ー受け入れの意を示している時だー
「俺も好きだっ」
必死に抑え込んだのに、かなり早急な声音になってしまう。誰がいつ何時現れるかわからない場所なのを忘れ、炭治郎は彼女の頬に手を添えた。
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八千代(プロフ) - あいさん» リアルの日常とても辛い思いをされてるのですね..私の作品が少しでもあいさんの普段の楽しみになれたのならこんなに嬉しい事はありません。私こそ暖かいコメントに勇気とモチベを貰えました笑ありがとうございます! (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます(*´-`)何度も読み返してくださってるなんて光栄です!亀更新で本当申し訳ないのですが、私も思い入れのある作品なんで、頑張って書きます!ありがとうございます!冨岡さんの夢は初挑戦ですが星詠み終わったら検討いたしますね(*^^*) (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 続き→冨岡さん落ちの夢小説も読んでみたいです!あくまで個人的な希望なので無理せず、ご検討よろしくお願いします!私は精神障害で親からの当たりも酷くて毎日死ぬほど辛い状況ですが、このお話を読んで少し元気をもらいました。ありがとうございます! (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - こんばんは!このお話とっても面白いですね!既に5回くらい読み返してます!そのくらい好きなお話です!更新を楽しみにしています!これからも、頑張ってください!応援しています!個人的な希望なのですが、このお話が終わったらでもいいので、八千代さんが書いた、 (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 花霞さん» 良かったです(^^)ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年12月7日 18時) (レス) id: 23228d6fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月30日 22時