痛い 〜肆〜 ページ48
居間に通されたA達は、囲炉裏を囲うように腰を下ろすと今まであった出来事等を語り始めた。
時折相槌を打ちながら二人の話を聞いてくれていた彼女からは優しい匂いととても懐かしい匂いがした。
その懐かしさは、母親と似た匂いがするからだという事に気づき、炭治郎は思わず目頭が熱くなる。
ー心地いい..ー
「そう言えばさっき弥七が来ていたのだけど、入れ違ってしまったわね。」
「あぁ、弥七さんなら先程道ですれ違いました。」
何となしに話題が変わり、それは炭治郎が出来る事なら避けたい内容であった。
話したくない反面、彼が一体志麻さんとA姉さんにどう関係した人物なのか、決して気にならないわけではなかった。結局、好奇心に負けて問いかける。
「弥七さんって、どんな方なんですか?」
聞くと彼は、身寄りはおらず近くの街で一人暮らしをしており、A姉さんが志麻さんと出逢う前からよく志麻さんの身の回りの力仕事などを買って出ていたのだという。そして、そうなるに至った経緯というのが衝撃的なものであった。
「彼ね、私達と同じなのよ。昔家族を鬼に殺されて、一人だけ生き残ったって、その時助けてくれたのが師範なんですって。だから、今も定期的に師範の事気にかけてくれてて、私としてはありがたいの」
「そうね。弟子入りを断ったからかしらね。本当は鬼殺隊に入りたがっていたけど、右目を負傷して殆ど見えていないから」
「さっきも走らないでくださいと前にあれ程言ったのに、駆けてきたものだからつんのめりそうになってたんです。怪我したら大変です」
「ふふ、仕方ないわ。貴女に会えた事がよっぽど嬉しかったのよA。」
そんな談笑が飛び交うが、炭治郎は一人浮かない顔をしていた。彼にそんな過去があったなんて、知らなかった。
鬼の脅威とは無縁な、ごく普通の幸せな一般家庭で育っている人であると思っていたのだ。
ーあんな何もない道端でコケるような情けない男に、A姉さんは守れないー
そう思ったが、右目が見えなかったのか。
ー鬼殺隊である彼女とは背負ってるものが違う。あの人には分かり合えない。俺なら彼女の荷を持ち上げてやることも出来るー
そう思ったが、背負いたくても背負えない。そんな苦渋があったのか。
少し同情してしまった。鬼に苦しめられてきた人は皆同士、そう考えてきたから。
けど..だからといって、A姉さんを渡す事は
出来ない。
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ライ - 全然大丈夫です!むしろ八千代さんの書いた星詠みの設定凄く好きなのでその設定にして頂けるとこちらも嬉しいです♪ありがとうございます! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - ありがとうございます!!こちらこそよろしくお願いします!! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ライさん» ただ基本星詠みの番外編とさせていただいてるので、設定はそちらに寄せさせていただきますのでご了承ください。頑張って書きます! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ライさん» コメントありがとうございます(*´-`)その設定は私としても大好物です笑 是非リクエストに応えさせたいただきたいので宜しくお願いします。 (2020年9月18日 12時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
ライ - いつも更新楽しみにしています!勝手なのですが、炭治郎がヤンデレで夢主が他の男性と仲良くしているのを見て激しく嫉妬するお話を書いて頂けませんか…?良ければお願いします!! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月1日 19時