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虹色の瞳に映して 〜伍〜 ページ43

例えば、鼻の効く炭治郎はよくこう表現していた。
(甘い匂いがする...)
その言葉を聞くたびに、彼は切羽詰まった眼差しをAに向けてきた。


基本的に炭治郎は、あまり挙動や言葉で感情を表に出さない子だ。けれどそういう状態になるという事は、その甘い匂いが彼にとって【期待通り】の意味合いを持っていたという事。


期待通りとは要するに、(好意の感情)であったり(羞恥心)であったり。いずれにしろ私が炭治郎に対して激しく感情を揺さぶられた時だった。
なら、今私が現在進行形で嗅いでいる、部屋全体が砂糖菓子で固められたかのように漂ってくる強烈な香りは...彼の相当強い想いの現れという事になるではないか。



「っ...」



私はみくびっていたのかもしれない。彼の想いを。
正直これ程までとは思ってもみなかった。
五感で感じれば痛いくらいにわかる。それは自身に絶えず警告を鳴らす。



ー【喰われてしまう..】ー



冗談抜きでそう思った。
ドキドキと鳴り響く炭治郎の心臓が、すぐ隣にある錯覚に陥る。
あぁ...そんなに、そんなに打ち鳴らさないで。耳が貴方の鼓動を覚えてしまう。私も釣られてしまいそうになるから。

お願い炭治郎。
ー私、おかしくなりそうだよ...ー




堪らずフイと顔を逸らすと、炭治郎は不安気に眉を下げた。


「どうしよう..怖がらせただろうか?」


はっきりとそんな台詞が脳内に浮かび上がるくらい、彼はあからさまに動揺の匂いや音を混じらせた。

意を決して、遠回しに今の自分の状況を伝えると、一瞬ポカンとした表情をしていたが、何かに気付いた途端彼は私からのけぞるように距離を取り、顔は音が立ちそうなくらい真っ赤に蒸発していた。



「違う、違うんだそのッ‼」



必死に言い訳を探しているみたいだったが、この程度の距離では全く隠せていない。それどころかこの焦りよう、どんどん墓穴を掘っていく。
それが彼もわかっているようで、なかなかその先の言葉を口に出来ないでいた。私は急いで異能の力を解く。




「..俺の気持ち、全部今ので気付いた?」


「..えっと、と言うと」



彼が指しているものと、私が捉えたものが同一の感情かわからない以上、下手に出たら思わぬ誤解を招いたり、場合によっては今後の関係性に影響すると思うと、上手く言えなかった。
それは炭治郎も同じみたいで、一つ深呼吸した後こう述べた。



「ごめん、やっぱり言わなくて大丈夫だ。あまり、貴女に知られたくないものもあったから。」

虹色の瞳に映して 〜陸〜→←虹色の瞳に映して 〜肆〜



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設定タグ:鬼滅の刃 , 竈門炭治郎   
作品ジャンル:アニメ
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ライ - 全然大丈夫です!むしろ八千代さんの書いた星詠みの設定凄く好きなのでその設定にして頂けるとこちらも嬉しいです♪ありがとうございます! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - ありがとうございます!!こちらこそよろしくお願いします!! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ライさん» ただ基本星詠みの番外編とさせていただいてるので、設定はそちらに寄せさせていただきますのでご了承ください。頑張って書きます! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ライさん» コメントありがとうございます(*´-`)その設定は私としても大好物です笑 是非リクエストに応えさせたいただきたいので宜しくお願いします。 (2020年9月18日 12時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
ライ - いつも更新楽しみにしています!勝手なのですが、炭治郎がヤンデレで夢主が他の男性と仲良くしているのを見て激しく嫉妬するお話を書いて頂けませんか…?良ければお願いします!! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月1日 19時

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