逃がさない 〜参〜 ページ15
全身訓練はAの思うようにはなかなかいかなかった。というのも、炭治郎は先程の反射訓練とは打って変わって動きが俊敏になり、Aが伸ばした手を
「うー..悔しい。あと少しなんだけど」
「でもかなり良くなってるよ!足かな..足にもっとグッと力を込める感じで、血を巡らすというか」
炭治郎は説明下手なりにもアドバイスを送ると、Aもまたふむふむと相槌を打ってイメージを作りあげるように、すうーと息を吸ってゆっくりと息を吐いた。
その時炭治郎は、大きく膨らむ彼女の胸元や額に滲む汗にふと目が奪われてしまった。
ー...まずいー
思わずバッと視線を逸らす。
「よし、何となくわかった気がする。炭治郎もう一回お願いします!」
「っ..あ、あぁ...」
すくりとAが立ち上がり、再度炭治郎に向き直る。この短時間で変化した彼の心境などわかる筈もなく、彼女は正面からダッと駆け出してきた。
一度意識してしまうとてんで駄目で、彼女のそれらから気を逸らすのが精一杯。
徐々に対決はAの優勢に変わっていく。
ピッ
僅かにAの指先が炭治郎の袖を掠めたその瞬間、彼女の眼の色が変わった。
「逃がさないんだから!!」
「ッ!」
その言葉を聞いて眼の色を変えたのは、炭治郎も同じであった。
パシッとAの手が炭治郎の腕を掴み取った瞬間、掴んだ勢いでAの体は後ろ倒れに、一瞬フリーズし力が抜けた炭治郎の体は吊られるように同じ方向へ傾いた。
ドタリと二人諸共床に倒れ込む。
その衝撃の痛みに顔を歪めたAが目を開くと、炭治郎が上に被さるような形で視界を覆っていた。
お互い全力で体を動かしていた為、肩で息をする荒い呼吸音が辺りに響く。
いつもなら
いつもの炭治郎なら、すぐに謝ってさっと体を退かしてくれる筈だった。
なのに一向にその気配がない。
それどころか..
眼の色はいつもの彼ではなく、赫い虹彩は妖しい光を放ち揺らいでいた。
「炭治郎、どいてくれる?」
「....うん」
心ここにあらずという感じの返事だ。居た堪れなくなりもぞもぞと這い出ようとするとガシッと腕を掴まれた。それは、文字通り逃がさないと言っているような力加減で
「A姉さん、俺も」
ー俺も逃がさないー
彼の発したその言葉が果たしてどういう意味なのかわからないまま、たまたま居合わせたアオイにこの場を強制的に収めさせられたのだった。
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ライ - 全然大丈夫です!むしろ八千代さんの書いた星詠みの設定凄く好きなのでその設定にして頂けるとこちらも嬉しいです♪ありがとうございます! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - ありがとうございます!!こちらこそよろしくお願いします!! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ライさん» ただ基本星詠みの番外編とさせていただいてるので、設定はそちらに寄せさせていただきますのでご了承ください。頑張って書きます! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ライさん» コメントありがとうございます(*´-`)その設定は私としても大好物です笑 是非リクエストに応えさせたいただきたいので宜しくお願いします。 (2020年9月18日 12時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
ライ - いつも更新楽しみにしています!勝手なのですが、炭治郎がヤンデレで夢主が他の男性と仲良くしているのを見て激しく嫉妬するお話を書いて頂けませんか…?良ければお願いします!! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月1日 19時