欲しいモノ 〜陸〜 ページ12
伝わってくれと言わんばかりにぐっと押し込まれる。彼の心音は否が応にも手の平に伝わってきた。それはドキドキと早鐘のように脈打っており、余裕なさげな表情と比例しているように思えた。
炭治郎は困ったように眉をハの字にしてこう語る。
「A姉さんの側に居ると、可愛らしい顔を見るといつもこうなる。もう随分と前からだ。」
「っ...」
「善逸に吹き込まれたんだろう?俺がA姉さんにどうして欲しいのか。どう思われたがっているのか。それ、まぁ合ってるよ。俺は、貴女に抱き締めて欲しいと思うし口吸いだってして欲しいと思ってる。し、したいとも思ってる。」
そう言った炭治郎の顔は、あどけない弟のそれではなく、Aの知らない男の人の顔だった。
炭治郎の鼓動が移ったかのように、Aの心臓も激しく脈打った。
そんな状況に陥っている事は、鼻の効く炭治郎にはバレてしまっているようで、やはり上機嫌に口元は弧を描いていた。
「俺がすると怖がらせてしまうから。A姉さんからのが欲しい。我儘だってわかってる、恋仲じゃないから口じゃなくていい。だから..」
ー貴女の温もりが欲しいです、どうかお願いしますー
切なそうに瞳を揺らしてそう懇願する彼に、とうとうAは根負けした。
ゆっくりと炭治郎の肩を戻す。
必然とお互いの顔がよく見える位置で、これでもかと顔を赤くしながら彼は唇をきゅっと結んでAの動作を見守っていた。
こめかみの方へと腕を伸ばすと、不意に手が耳元に触れて炭治郎はぴくりと反応する。耳飾りがからりと揺れた。
「炭治郎、目瞑って」
「っはい」
緊張したように、でも言われるがまま目もぎゅっと閉じて待てをしている炭治郎が、何だかとても可愛らしく思えた。Aは僅かに上体を伸ばすと、炭治郎の額にそっと優しく口付けをする。
数秒にも満たない一瞬の触れ合いだったが、炭治郎は恍惚とした眼差しでAを見つめていた。
「炭治郎は..きっとこんなんじゃ満足いかないと思うけど、今はこれで許してね。」
「A姉さん..」
「この前の七夕の夜は、突き放すような言い方をしてしまってごめんなさい。私は貴方の側に居るわ。だから大丈夫、安心して」
そうにこりの微笑んでやると、炭治郎は感極まったように再びAの体を無我夢中で抱き締める。
この温もりが、今の彼を少しでも癒してあげられるの
なら包み込んであげたい。
Aはいつの間にかそう思うようになっていた。
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ライ - 全然大丈夫です!むしろ八千代さんの書いた星詠みの設定凄く好きなのでその設定にして頂けるとこちらも嬉しいです♪ありがとうございます! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - ありがとうございます!!こちらこそよろしくお願いします!! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ライさん» ただ基本星詠みの番外編とさせていただいてるので、設定はそちらに寄せさせていただきますのでご了承ください。頑張って書きます! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ライさん» コメントありがとうございます(*´-`)その設定は私としても大好物です笑 是非リクエストに応えさせたいただきたいので宜しくお願いします。 (2020年9月18日 12時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
ライ - いつも更新楽しみにしています!勝手なのですが、炭治郎がヤンデレで夢主が他の男性と仲良くしているのを見て激しく嫉妬するお話を書いて頂けませんか…?良ければお願いします!! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月1日 19時