★鈴蘭への恋慕 〜壱〜 ページ1
自分が生まれつき人よりも鼻が効くというのは、物心ついた頃から気付いていた。
炭を焼く時には出来上がる頃合がすぐわかったし、道なき道を歩いていても家路の方向や獣の匂いもわかり、山暮らしをする上でこの力はとても重宝した。
だけど...少し困った事もあった。
「A!ちょっとこっちを見てちょうだい」
「はーい!」
母に呼ばれてとたとたと御勝手に向かって行ったA姉さん、炭治郎のすぐ横を通り過ぎた。その時、ふわりと鼻腔をくすぐる何とも心地の良い香りが漂ってきた。
「っ...」
彼女の匂いは他の家族とは全く別物であり、同じ物を食べて同じ家に住んでいるのにもかかわらず、何故だろうと思った。この頃から、炭治郎にとって彼女は
【特別な女の子】になった
事あるごとに彼女から発せられる香りはとても心地良いけれど、時に炭治郎を緊張させた。
甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる時、一緒に手を繋いで山を歩いている時、同じ寝床で横になっている時、
私生活を送る上で距離が縮まる事は日時茶飯事で、彼女の柔らかい笑みを見る度に、香りを嗅ぐ度に、幼い炭治郎の心臓をどきりと跳ねさせた。
「..どうしたの?炭治郎」
「っ何でもない」
時折、跳ねるだけでは治まらず、持続的に鼓動が速まる時もあった。するとA姉さんはきょとんとした顔をした後、変なのーとカラカラ笑うので、そんな表情を見ては、己の変化に狼狽るのだった。
自分はどうしてしまったんだろう?
家族なのに、姉なのに、こんなに緊張したり動揺するなんておかしいな。そう悩む事が多くなった。
他の兄弟達は何も感じないのだろうか?
そんな最中、決定的な出来事が起きた。
A姉さん宛に贈られた、文と簪。
それは、彼女に恋慕する男がしたためた物だった。
他の家族は、姉さんが簪をつけ微笑む姿を見て、綺麗だの似合うだのと騒いでいた。けど炭治郎は、今すぐにその簪を奪い取りどこかに放り投げたいくらいの衝動に駆られていたのだ。
明らかに自分だけが、この場で浮いていた。
周りの
当然、そんな乱暴が働けるわけもなく、炭治郎はその場から無我夢中で走り去った。
ーあんな簪、綺麗なわけあるかー
ーA姉さんも何であんな風に笑うんだー
ーあんな男の、どこがっ!ー
そんな八つ当たりのような言葉を、心の中で繰り返していた。
30人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ライ - 全然大丈夫です!むしろ八千代さんの書いた星詠みの設定凄く好きなのでその設定にして頂けるとこちらも嬉しいです♪ありがとうございます! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - ありがとうございます!!こちらこそよろしくお願いします!! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ライさん» ただ基本星詠みの番外編とさせていただいてるので、設定はそちらに寄せさせていただきますのでご了承ください。頑張って書きます! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ライさん» コメントありがとうございます(*´-`)その設定は私としても大好物です笑 是非リクエストに応えさせたいただきたいので宜しくお願いします。 (2020年9月18日 12時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
ライ - いつも更新楽しみにしています!勝手なのですが、炭治郎がヤンデレで夢主が他の男性と仲良くしているのを見て激しく嫉妬するお話を書いて頂けませんか…?良ければお願いします!! (2020年9月18日 12時) (レス) id: 36dcb4ceb6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月1日 19時