特権 ページ18
ー炭治郎sideー
休日の店は特に大忙しだ。父と共に、俺はほぼ裏に篭りっきりでパンを捏ねては焼いての繰り返しで、レジ打ちやパンの陳列は母とA姉さん、禰豆子の3人が手分けしてやってくれている。
ひっきりなしに客が出入りしていたピーク時を過ぎて、ようやく少し落ち着いて来た昼過ぎ。姉さん達がちょうど休憩中だった為、来客を常に気にしていた炭治郎は、聞き慣れたドアのベルの音に反応し表に顔を出した。
「いらっしゃいませー!」
ちょうど焼き上がったばかりのメロンパンを勧めると、そのお客さんは吃驚したように炭治郎を見た。
翡翠色の瞳と、男子にしては長めのふわっとした髪の毛。あどけない顔はかなり整っていて同性から見てもさぞかしモテるんだろうなぁと炭治郎はぼんやり思った。
にしても、どこかで見た事があるような顔だ...どこだったろうか?
「君、Aさんの弟さん?」
そう言われ、今度は炭治郎が目を丸くする番だった。
彼女の事を知っている..?
まじまじと彼の顔を観察していたら唐突に思い出した。
確かこの前、将棋界を沸かせている期待の新人がいるとテレビで特集されていた。それを居間で見ていたら、A姉さんが興奮したようにテレビに釘付けとなっていた。その人物にそっくりだったのだ。
「わぁ!凄いテレビに出てるわ。」
「....誰?」
「彼ね、よくうちのバイト先に来てくれる常連さんで、しかも将棋界ではかなり名前が知られているんだって、まだ中学生なのに凄いわよね。」
彼女は目を輝かせてそう炭治郎に語った。何となく面白くなかったけれど、その場で顔には出さず、さも興味があるかのように相槌を打ったのを覚えている。
ー名前は....確か【時透】ー
A姉さんの知り合いならば無我には出来ないと思った。お得意の人当たりの良さで接すれば、最初彼から発せられていたぎくしゃくした匂いも段々と柔らかくなっていった。
そして不意に彼は、あるパンの側に寄って美味しそうだと溢した。
「あぁ、それ考案したのは」
炭治郎が自慢げにAの名前を出そうとした時、奥からちょうど張本人が戻ってきて、2人の間にひょっこりと顔を出す。
彼女が考案したのは自分だが、俺と2人で作ったものだと言ったのを聞いて、つい嬉しくなった。
何故なら、新作のパン作りは主に炭治郎とAの二人三脚で行う事が多い。それは言うなれば
ーA姉さんを独占出来る俺の特権なのだー
69人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
八千代(プロフ) - 日月さん» コメントありがとうございます!凄く細かいところまで見て感じてくださってとても嬉しいです(*´-`)これからも二人の応援宜しくお願いします。 (2020年8月30日 18時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
日月 - 八千夜さん!炭治郎君可愛い過ぎます!!!本当に有難う御座います!とっても面白いです。個人的な感想を言うと○○姉さんを独占出来る俺の特権なのだがメチャ好きです!八千夜さんは言葉遣いもとても綺麗ですね!見習います!これからも応援してます!更新頑張って下さい! (2020年8月30日 15時) (レス) id: 3cf6a9796c (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 詩都花@おしづさん» コメントありがとうございました!こちらこそ、イメージに合う素敵な素材と出会うことが出来てとても嬉しいです!また機会がありましたら利用させていただきますので、宜しくお願いします(*´-`) (2020年5月21日 22時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
詩都花@おしづ(プロフ) - 確認致しました。異常なしです!八千代 |さんの作品はとても素敵なので(私とけた違いw)これからも頑張ってください!応援しています!! (2020年5月21日 21時) (レス) id: 3a39613abc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:八千代 | 作成日時:2020年5月20日 22時