理性の範囲外 ページ12
「炭治郎、どうしたの?」
不意に歩みを止めた炭治郎を不思議に思ったらしい彼女がくるりと振り返った。
きょとんとした丸い目を見た瞬間、ハッと我に帰る。
「、何でもない。」
顔色を悟られないよう俯き加減で、ずんずんと進んでいく彼を、六太とAは首を傾げながら顔を見合わせた。
ー抑えろ、こんな事考えちゃいけないっー
この感覚は、数年前から炭治郎自身も自覚していた。
理性の範囲外で、勝手にひた走っていく感情。
A姉さんの事を、異性として好いているのだと気付いた頃より、思春期に突入してからと言うもの、ふとしたきっかけで湧き上がる欲求。
でも、俺はこの気持ちを発した事はおろか、悟らせた事もない。
と言うか、そんな事出来るわけがない。
いくら血縁関係にないとは言え、家族として一つ屋根の下共に生活している者からそんな想いを抱かれていると知れば、そんなの普通に気持ち悪がるだろう。
他の家族にバレればそれこそ....彼女にも家族にも、皆に迷惑がかかる。
俺は、今ようやく笑顔を取り戻した彼女を、困らせたくないし悲しませたくない。
考えなくても済む悩みは、増やすべきではない。
だから、この想いはひた隠しにしなければいけないのだ。
例え、自分の心が異常な渇きを訴えているとしても、徹底的に無視をきめこむ。
ーそうしないと、いけないんだ....ー
家路に着くと、いつものように帰宅している家族がわっと玄関まで出迎えてくれた。
「お帰りなさーい!」
「あ、三人一緒なんだね良かったぁ」
靴を脱ぐや否や下の子達が我先にと群がってくる。
炭兄ご飯出来るまで宿題教えてくれよーと竹雄が炭治郎の袖をくいと寄せるが、それをAがやんわりと制す。
「炭治郎今日学校で体調悪くなっちゃったから、皆あんまりおねだりしちゃ駄目よ?竹雄、夕飯の後で良ければ宿題なら私が見てあげるからそれでもいい?」
え、そうなの?と目を丸くした後、彼は心配そうに眉を引っ下げて炭治郎を労った。
「そっか、炭兄疲れてるんだな。ごめん。宿題はひな姉に見て貰うよ!」
それはそれは嬉しそうに顔を綻ばせる竹雄。そんな様子を見たら、咄嗟にこう口に出てしまった。
「大丈夫だ俺が見る!」
え?とぱちくりさせるAに構う事なく、A姉さんも忙しいんだと言って炭治郎は混乱している弟の背中をぐいっと押し込んだ。
あぁ、またやらかした
まさか、12歳の弟にまで嫉妬するだなんて..
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八千代(プロフ) - 日月さん» コメントありがとうございます!凄く細かいところまで見て感じてくださってとても嬉しいです(*´-`)これからも二人の応援宜しくお願いします。 (2020年8月30日 18時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
日月 - 八千夜さん!炭治郎君可愛い過ぎます!!!本当に有難う御座います!とっても面白いです。個人的な感想を言うと○○姉さんを独占出来る俺の特権なのだがメチャ好きです!八千夜さんは言葉遣いもとても綺麗ですね!見習います!これからも応援してます!更新頑張って下さい! (2020年8月30日 15時) (レス) id: 3cf6a9796c (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 詩都花@おしづさん» コメントありがとうございました!こちらこそ、イメージに合う素敵な素材と出会うことが出来てとても嬉しいです!また機会がありましたら利用させていただきますので、宜しくお願いします(*´-`) (2020年5月21日 22時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
詩都花@おしづ(プロフ) - 確認致しました。異常なしです!八千代 |さんの作品はとても素敵なので(私とけた違いw)これからも頑張ってください!応援しています!! (2020年5月21日 21時) (レス) id: 3a39613abc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年5月20日 22時