第一夜 kwmr ページ1
河村さんの夢を見た。
河村さんは、その柔らかな髪をふわりとさせて、私を抱き締めた。白いシャツは体を守る透明な薄皮のように、腕や腰にまとわりついていた。「みずうち」。白い光がたっぷりと部屋に満ちていた。私は河村さんの腕の中で眠っていた。河村さんはわたしの心の一部のようにたゆたっていた。
私は河村さんのことを知らない。話したこともない。けれど、昔から私の一部であったかのようになじんでいた。河村さんの動きは私の身体の一つひとつと繋がっていて、河村さんが何を考えているのか、次どのように動くのか、よく分かった。
「みずうち」
河村さんは「僕はね、もう死ぬよ」と言った。そう言われる前から、そう言われることを分かっていた。だから、きっとそうなのだろうと思った。
「僕は死ぬけれど、僕がここにいた、という証を決して残したくないので、僕の身体を星の砂の中に埋めて欲しい。本当は君の指先で一粒一粒掘った穴によこたえて欲しいけれど、それは難しいだろうから、星の砂が集まっていて、柔らかくなっているところにそっと沈めて欲しい」
光でいっぱいの部屋はあまりにも広く、星全体を覆っていたので、地平線がどこまでも見えた。私は大きな光が見える方向に向かって歩き、星の砂がたっぷり浮かんでいる場所を見つけると、河村さんを横たえ星の砂の隣で眠った。
目を閉じても眠っても、白い光でいっぱいだった。河村さんはまだ私の一部のままで、だから河村さんは星の砂の中で目を覚まさないのだろう。
続く
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作者名：ななほし | 作成日時：2021年2月14日 0時
