Chocolate Sling -3-

4 ページ44

.


「うっわ、すげぇ豪華だな…」




仕事を終えてすぐ取りに行ったバースデーケーキを取り出して、あらゆる角度の写真を撮ってから、切り分けて取り皿に盛る。




「ねっ、めっちゃ可愛くない？！想像以上の出来だったし、やっぱりお金掛けるのと掛けないのとでは 雲泥の差って感じ〜！」




「一体いくら掛けたんだよ？」




「別にそんなに高くないけど……でも、手作りと比べたらやっぱり高いじゃん。」




"Happy Birthday Dear Hiromitsu♡"




筆記体でそう記されたチョコレートのプレートを、つい、うっとりと眺めてしまう。




みっくん、はさすがに恥ずかしすぎるから、下の名前でオーダーしちゃったけど･･･




やっぱり、"Hiromitsu" っていい響き。




この方が彼女気分でお祝い出来るし。




「……さっきから何ニヤけてんの？」




「んー？ふふっ、幸せだなぁって ♪」




「本人不在の誕生会が？」




「うん、超幸せ。」




「……まぁ、少なくとも現実的な恋愛してる時よりかはよっぽど幸せそうだわ。」




「ふふ、明日は有給取ってるし、今日はとことん語ってとことん飲むからね？」




「とことん語るのはお前だけな？しかも、俺は明日も仕事なんですけど？」




「はい、かんぱ〜い ♪」




文句を言いながらもなんだかんだで付き合ってくれる優斗に、今日も甘えることにする。




.




アイドルの彼を追うようになってから、言ってしまえば周りの男に目がいかなくなった。




気持ちを伝えたり、付き合った結婚することは疎か、会うことすらままならない。




それでも私は、みっくんが好き。




いつかみっくんに特別な人が出来たとしても、みっくんが幸せならそれでいい。




ライブに行ったって、何万何十万といるファンのうちの1人としてしか見てもらえなくても、彼の視界に一瞬でも映ることが出来るなら、それだけで幸せだって思えるんだもん。




それに･････




こっちの気持ちがどれだけ重くなっても、相手に負担をかけることもないし、いくら仕事に没頭して彼のことが頭から離れても、そんなことを知る由もない彼は私を咎めたり責めたりすることもない。




だって、彼は私の存在すら知らないから。




通勤中は彼らの曲を聴いて、家に帰ったら録画している彼らの番組やDVDを観たり、休日は自分のペースでロケ地巡りをしたり･･･




ストレスフリーな毎日を過ごせてる。




見返りを求めない恋は、すごく楽だ。

5→←3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す