Chocolate Sling -3-

40【前編end】 ページ40

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____あの日から、今日で2年と1ヶ月。




『……ただいま、』




誰もいない部屋に響く声。




Aがいてもいなくても、時間は変わらずに過ぎていくことを身をもって知った。




返事が返ってくることはないと分かっていても『ただいま』と暗闇に向かって呟き、コンビニでは食べもしないスイーツに自然と目が止まり、虚しくなるだけだと自分に何度も言い聞かせるのに、どうしてもカゴに入れてしまう。




あーあ･･･Aが知ったら怒るだろうな。




食べ物を粗末にするなんて、って･･･




『……っ、』




なぁA･･･




もう、俺達は終わったってこと？




"今までありがとう" って、Aにとって俺とのことは その程度だったのかよ･･･？




この1ヶ月、ずっと考えていた。




最初のうちは "一方的に"、"勝手に"、"裏切った" と怒りや悲しみの感情ばかりだった。




だけど少し冷静になってみると、ここ1年ほど、仕事が忙しいことを言い訳にして、Aを蔑ろにしていたことに気付いたんだ。




珍しく残業がなくて早く帰れる日も、仕事の付き合いで飲みに行ったりして、結局家に帰り着く頃には日付を回っていたり･･･




元々、俺はそうゆう性格だった。




学生時代だって、彼女との約束よりも友人との約束やバイトを優先させることが多々あって、別れる時は大抵俺が振られるパターン。




社会人になって、恋愛は当分いいやと思っていたのに すぐAを好きになった。




"絶対大事にするし……幸せにする"




その言葉は、決して嘘じゃなかった。




目に涙を浮かべながら 嬉しそうに微笑むAを、心から愛おしいと思ったんだ。




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"付き合う" ことがゴールではない。




些細なことで言い合いになったり、喧嘩をしたり、それらを乗り越えながら、いずれは一生を添い遂げると永遠を誓い合う。




そうなることを信じていた。




そうなることを望んでいた。




Aとの出逢いは運命だと思っているし、これから先もずっとずっと一緒にいられる。




"安心" がやがて "傲り" に変わってしまうことを、あの時の俺はまだ知らなかった。




自覚がなかった、だなんて言い訳に過ぎないし、今更何を言っても もう遅い。




俺の隣に、もうAはいない。




じわりと視界が涙で滲む。




『A……』




"ふふっ、…宏光？"




伸ばした手が、虚しく空を切った。








ーto be continuedー

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