Chocolate Sling -3-

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『……このままでいいから、よく聞けよ？』




心を落ち着けるのに必死だった。




抱き締め返したくて宙を彷徨う腕に力を込めて、表情が緩まないように口元を引き締めて、なるべくいつも通りの自分を意識する。




萩野の前では出来る限りカッコよくいたいし、頼られる存在でありたいと思うから。




･･･まぁ、既に色々とやらかしてるけど。




ちゃんと言えなかった俺に代わって、分かりやすく意思表示をしてくれた萩野。




そんな萩野に、ちゃんと応えたいんだ。




もう逃げたりなんてしない。




『萩……Aのこと、もうずっと前から ただの同期として見れなくなってた。』




ヒールを履いている萩野とはあまり背丈が変わらず、少し顔を傾けるとすぐそばに萩野の耳があったから、耳元で言葉を続けた。




くすぐったそうに身を捩る萩野が愛おしくて、好きで好きで、堪らなくなる。




4つも歳下で、だけど同期で、俺のことをタメだと勘違いしている萩野に、最初は兄のような気持ちで接していたような気がする。




そんな萩野に恋愛感情を持つなんて、日を追うごとにこんなにも好きになるなんて･･･




誰かを "好きだ" と思うことはあっても、"愛おしい" と感じたことは一度もなかった。




『……俺、Aが好き。』




そう囁くと、萩野の肩が小さく跳ねて、抱きつく腕に ぎゅう、って力が入った。




言葉で言われたわけじゃないのに、言葉よりも強く伝わってくる想いがそこにはあった。




ずっと、"A" って呼びたくて･･･




周りが "萩野ちゃん" ってあだ名で呼ぶ中で、俺だけは "萩野" って呼ぶようにしていた。




その方が距離を縮められる気がしたから。




恋愛云々は関係なく 人として萩野が好きだったし、もっと仲良くなりたかった。




仲良くなればなるほど、気付けばいつも隣にいて、隣にいるのが当たり前になり、隣にいないと寂しいと思うようになった。




萩野の隣に俺じゃない誰かが立つのが嫌で、それは確実に "嫉妬" という感情だった。




自覚してから随分時間が経ってしまったけど、萩野は一体いつから俺のことを･･･




気になる点はいくつもある。




だけど今はそれよりも。




『絶対大事にするし……幸せにする。』




この手で強く、君を抱き締めたい。




全身で、これでもかってくらい伝えたい。




俺がどれだけ君を好きか･･･




どれだけ想っているか、伝えたいんだ。

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