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田中樹の頭は、赤い。
・・・終わり。
観察して見えるものなんてこれだけだった。
まあ、顔だちはきっと整っているほうなんだと思う。
あんまりまじまじと見たことないから断言はできないけど。
なんて思っていると、田中樹がむくりと起き上がった。
それにちょっとびっくりして、
「っ、うわ」
何て間抜けな声を出すもんだから。
「・・・あ?」
ああ私のバカ。
席結構近いんだから聞こえるの分かるだろこの馬鹿。
もうどうしようもないから何事もなかったかのように目をそらす。
「・・・おい」
やばいやばい絶対怒ってる。
怒らせたらヤバそうな人怒らせた。
それでも私は頑なに目をそらして、何なら本を読もうかなんて机の中をあさる。
「・・・お前だよ、そこの、お前」
ああ、あー・・・。
なんか、言語化のできない絶望と言いますか。
「・・・なに、俺から行けって?」
いや、来ないでください。
できることならそのまま火星まで行っちゃってください。
「・・・目ぐらい合わせろよ」
無理無理無理無理。
何言ってんですかこの人。
ガタッ
ああ、ついにこの人席を立った。
私はこのままきっとこのままリンチに遭って・・・。
「おーい、聞こえてる?耳悪い感じ?大丈夫?」
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作者名:nanaco | 作成日時:2023年12月8日 15時