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「樹はさ、ほんっとに勉強しなかったの」
割と落ち着いた森本先輩が、ぽつぽつと話し始めた。
「あなたシャーペン握ったことある？何なら字書いたことある？ってくらい勉強してなくてさ」
「はあ、」
「俺らがそれとなしに言ってもスルー。テストは名前も書かずに白紙で出すし」
「ほう」
「その樹が委員会の仕事忘れてまで勉強に首ったけだなんてさ。え、Aちゃんなんか言った？樹の人生変えるような言葉」
「・・・言えたらいいですけどね。彼が自発的に始めたと思いますよ」
「まじか、」
「あー、でも、一学期中間の時も結構勉強してたと思いますよ、テストも結構埋まってましたし」
ふと、そういえばと思いだしたことを言ってみた。
結構授業も聞いていたし、ちゃんとシャーペンも握ってた。
「え、嘘」
「ほんとですよ」
「えー、じゃあやっぱりさ、Aちゃんが変えたんじゃないの？樹のこと。言葉だけじゃない、なんか行動？とか」
「何で私なんですか、私じゃない他の人、それこそ森本先輩かもしれないじゃないですか」
「・・・俺は樹のこと変えれないよ。ていうか、何でそんな否定するわけ？いいじゃん、いい方向に変えられたなら」
確かに、人をいい方向に変化できたのならいい事だろう。
けど、私こそあの人のことを変えられない。
変えたくても、変える力がない。
「留年に危機感を感じて勉強を始めたってのが普通だと思いますけどね」
「そう？ならいいけどさあ・・・」
いまだ腑に落ちないところがあるようだが、私にはそれしか考えられない。
「せっかく図書室にいるんだし、本でも読んでったらどうですか？それか勉強とか。もう二週間前ですよ」
「ん−、じゃあそうするかあ！」
大きく伸びをしてリュックをあさる。
図書室で、二人きり。
この状況がどれだけ危険かなんて、今の私は考えもしなかった。
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作者名：nanaco | 作成日時：2024年2月4日 10時
