５０ ページ3
夏休みが明け、９月末。
私たち「ほとんどの」一年生にとって、高校生になって３回目の定期考査だった。
前回と前々回の定期考査で、樹先輩は、
「だーいじょうぶ大丈夫、流石に一年のくらい楽勝だって！」
とのこと。
ですが、今回は、
「お願いします教えてくださいここ落としたらヤバいんですお願いします」
「え、っと、あなたにプライドというものは存在しないんですか」
後輩に勉強教えてほしいって懇願する先輩って、なかなか引く。
「今プライドとか言ってたら俺将来絶対闇落ちするから。ね？お願いしますこの通りです」
きれいな九十度で頭を下げられた。
「あのー、ここ、教室なんですけど・・・」
周りの人たちが地球外生命体を見る目で私たちを見ている。
樹先輩はそれでも頑なに頭を上げようとしない。
「分かりました！分かりましたから早く顔上げてください！」
「まじで！？ほんとに！？」
がばっと顔だけを上げる。
その体勢、きつくないんだろうか。
「ほんとですほんとですから！」
「やった！ありがとうまじで一生感謝する！」
ぎゅっと私の手を取り、今まで見たことないくらいきらっきらの目で私を見つめる。
「じゃあさ、明日、空いてる？」
「明日、ですか。空いてると思いますけど」
「じゃあ明日の放課後、図書室集合ね、よろしく！」
じゃ！と言って、樹先輩は颯爽と教室から去っていった。
いや、これから委員会じゃないですか。
なに、さも今日はこれでお別れみたいな雰囲気醸し出しちゃってるんですか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：nanaco | 作成日時：2024年2月4日 10時
