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「あの・・・、荷物とか、学校に置いてきたんですけど、どうするんですか」
「えー？明日取りに行けばいいじゃん。置き勉してるっしょ？」
そんな会話を、私たちは閑静な住宅街でしていた。
真っ昼間。
スマホは運よくポケットの中に入っていたため、電車で何駅か揺られ、辿り着いたところだった。
「え、してないですけど」
「え、まじ？・・・なんかごめんね」
「・・・なんとかします」
ふたり、隣同士で歩いていた。
このくそ昼間に何も荷物を持たない制服姿の学生って、周りの人にどう見られるんだろう。
「・・・あのさ、」
「はい」
「樹、休みじゃん」
「そうですね」
「寂しい？」
「・・・はい」
あの人の存在が、私のことを救っていたんだという事を、今になって思う。
帰ってきたら、きちんと感謝しなければ。
「・・・森本先輩は？寂しいんですか」
「俺？俺も寂しいよ。いつ帰ってくるんだっけ」
「え、っと、木曜日くらいだったような気がします」
「ん、そか」
その言葉を切れ目に、会話が途切れる。
ただぶらぶらと歩いていた。
樹先輩は、不思議な人だ。
まるで私のことを出会う前から知っていたかのような行動をしたり、私の心をえぐってくるような発言をしたりする。
樹先輩は、気づいたら私の「特別」になっていた。
私は誰をも平等に嫌う。
そうだったはずなのに。
森本先輩は、嫌いじゃないけど、中学生の頃の思い出があるから、少し抵抗がある。
その割には、今隣で歩いているわけだけれども。
私の価値観が、少しずつ崩れていくのを感じている。
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作者名：nanaco | 作成日時：2024年2月4日 10時
