あなたとわたし。 (ページ5)

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「いや、何でって俺、こっち帰り道やし。そっちこそ何しとんの？」

「別に何もしてない」

「そっか。早く帰り。親御さん心配するで？」

「・・・しないよ、心配なんて。何ならこのまま死ねばいいと思ってるに決まってる」

今思うと、何で私はこの人にこんなことを言ったんだろう、と不思議になる。

この人は、私のことを何も知らないのに。

「・・・そんなこと、無いやろ。自分の子供に死んでほしいと思う親なんて、」

「いないと思うでしょ？でも、母と引き換えになるなら、父は私の命なんて喜んで捧げる」

・・・一度、そういう事があった。

私が５歳くらいだった時。

いかにも怪しい、スーツを着込んだ男性が家に上がり込んで、何かを熱っぽく父に語り掛けていた。

その数日後。

父は私の首を絞めた。

意識を失う直前、奇跡のように隣人のおばさんがチャイムを鳴らした。

あの後、何があったかなんて覚えていない。

気がつけば、病院で寝ていた。

そして何故か今も、父に虐げられながら暮らしている。

「・・・っ、」

「もう帰る。また明日。・・・あるかどうかわからないけど」

黙り込んだ永瀬くんを尻目に、私はベンチから立ち上がった。

「ちょ、待って！」

「・・・何？」

振り返ると、そこには立ち尽くした永瀬君の姿があった。

「・・・また明日。絶対な」

「っ、」

今度は、私が黙り込む番だった。

永瀬くんが、すれ違いざまに、肩をポンと叩いて去っていった。