20話 ページ28
少し隙間を開け、ふっ、と息を吹きかけた。
扉の隙間から急に明るい光が漏れた。
その瞬間、その部屋から男女関係なく悲鳴が聞こえだし、扉を開けたくさんの人が流れるようにその部屋から出た。
あからさまに目の前にいたのに自分たちは気づかれなかったことにセンラは首をかしげていた。
「私が魔法かけといたから。」
にひ、と笑って紗奈はその部屋に入る。
センラは戦う必要ないな、と何故か落ち込んだ。
たくさんのモニター奥に広がる中、5メートルほど向こうには探し求めていたものがあった。
「私の杖…!」
黄色く光る30センチほどの杖。
センラは見た目ただのプラスチックにしか見えなかったが、ただならぬ気配を感じとっていた。
他にも緑赤紫とあって、あの3人のだろうとセンラは確信した。
他の3本の杖も取り、紗奈はここから出ようと振り返った瞬間、警備員に囲まれた。
「おい、邪魔や。」
センラは手の甲を噛むと、その手からは引き出されるように血が出てきた。
その血は形を成し、剣へと変わる。
5人解いた警備員を全て倒して、廊下に出て走り出す。
「まさか殺してないよね?」
「んなわけないやろ!殺してないわ!」
センラにとっては切り殺しても良かったのだが、紗奈が人は殺せないと言っていたので、殺すことは躊躇し、手を抜いた。
だが…首元なので必ず死んでないとも言えないが。
「後は他の人たちと合流しなきゃね…。」
すると、物音が聞こえてきて、そこに向かえば警備員が人だかりになっていた。
紗奈は杖を向け、モゴモゴと何かをつぶやいた後、その杖から何かが飛び出し、一瞬で警備員を氷の中に閉じ込めてしまった。
「水穂?大丈夫ー?」
紗奈は高くジャンプし、警備員の集まりの中心へ着地した。
そこには水穂がいて、隣には坂田もいた。
「紗奈!うぅ…痛い…。」
何かで中途半端に殴られたのか…、額の右辺りから少し血が出ている。
「坂田さん。(水穂の名誉的に)見ないので治療してあげて下さい。」
そしてまた紗奈は警備員氷漬けを乗り越えた。
「どうやった?」
急にまた戻ってきた紗奈にセンラは聞く。
「傷の治療中〜」
「あぁ」
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傷の治療とは…吸血鬼に吸われた場所を舐められると傷が治る。しかしこれは吸血鬼だけが持っている特徴であって、吸血鬼以外の人がなめても何も起こらない。
吸血鬼以外のことで起きた傷でも治る。
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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時