４日間だけ。【まふまふ】

ななひゃくさんじゅうにちめ ページ9

あの交通事故から２年が経った。

右手はアメリカに行ったおかげか日常生活を行えるくらいには復活していて、

私はあのとき、真冬さんが言ってくれたように歌を歌っている。

ある時、動画投稿サイトのニコニコに曲をあげた。

その曲は、あの日真冬さんのために歌った曲。

あの曲で少しだけ有名になれて、今はニコニコライブに出演させてもらえるほどになった。

音楽が好きで、

クラリネットをやっていて、

事故に遭って、

真冬さんに会えた。

その奇跡が、私に希望をもたらした。

あのビデオを撮った時から、私の気持ちは変わらないままで。

この活動を続けていれば、

いつかはまた真冬さんに会えるかもしれないから。

それが叶ったら、今度は画面越しじゃなくて、

面と向かって“好きです”と言いたい。

スタッフの人が、私の出番だと呼んでいる。

さぁ、いこう。

待ってくれているファンと、

どこにいるのかわからない、私の想い人のために。

楽屋から廊下に出た途端、ドンッと軽く肩がぶつかった。

『すみませんっ」

そういった男の人の声は、あの人の声そっくりで。

ううん、あの人しかいない。

「すみません...真冬さん...」

そういって彼の方に振り向いた私の目にはきっと、

あの日からずっと我慢していた、涙が浮かんでいた。

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