八百万家の天狗系執事さん (ページ10)

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Aside

それから数年経ち、僕は9歳になった。

その頃には敬語が板につき、施設内では教官のような立場になっていた。

そんなある日、僕は上官に呼ばれ上官室へ来ていた。

『烏崎Aです。上官殿、呼び出しにより参上しました』

「入れ」

中へ入ると上官殿とは別に客人が来ていた。

机には何かの書類が置かれている。

「烏崎A、君を引き抜きの話がきている」

『引き抜き…ですか』

上官は頷き、気になっていた客人を紹介した。

「彼は八百万家の当主殿だ。お前を引き抜きたいと仰っている」

八百万家＿＿この業界でも何度か耳にしたことがある程の名家だ。

そのような貴族様が何故僕を？

八百万父「初めまして、烏崎Aさん

君の事はよく聞いているよ。その歳でこの業績、聞いていた通り優秀だね」

『お初にお目にかかります、烏崎Aです

八百万家当主殿にそう言っていただけるなんて恐悦至極にごさいます』

軽い自己紹介が終わり本題に入る。

客人用のソファーに向かい合わせに座る。

机には先程目に入った書類が置かれていた。

八百万父「さっき言った通り君を引き抜きたいと思っているんだ

実はね、私には君と同い年の娘がいるんだ

君には娘の執事兼護衛を頼みたいんだ」

『ご息女様の執事兼護衛……ですか

あの、お言葉ですが私よりも適役な方がいらっしゃるのでは？

貴方様の言う通り私はまだ子供ですし……』

八百万父「ハハハッ、君はそこらにいる大人より十分に強いよ

それにあわよくば君には娘と親友のようなライバルのやうな、そんな関係になって欲しいんだ」

『親友やライバル……？』

八百万父「嗚呼、私と妻は仕事柄娘に構ってやれる時間が少ない。娘には寂しい思いをさせてしまっているだろう

君にはそんな娘の支えになってもらいたい。普段近くにいられない私達の代わりにね

勿論、それなりの報酬は用意しよう。衣食住の事も心配はいらない

引き受けてくれるかい？」

そう言って出されたのは契約書だった。

元々、この為に訓練をさせられてきたのだから拒否する理由はない。

ご息女の世話と遊び相手兼護衛、それに対して高すぎる報酬。

しかも衣食住の心配はなし。

こちらとしては虫のよすぎる話だった。

『本当に私でいいのですか？』

八百万父「嗚呼、勿論だ」

そう言って微笑む当主殿に僕はサインと印を押した。