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「禄?」
もう一度妹の名を呼んだ
こちらを振り返る
困ったように首を傾げてみれば、妹はいつものように、ふわりと微笑む
そしてこちらにトテトテと、走ってこようとした そう、そうしようとしたのだ

「禄!」
ああ、手が届かない
伸ばした手が掴むものは、何もない
急いで「彼」は崖を見下ろした
そこには、崖の下で恐らくは亡くなっている妹の姿だけが、見受けられた
この手がもっとあったなら、妹を助けられただろう
この手がもっと伸びたなら、妹を助けられただろう

手が伸びていた
「彼」は確かに見たのだ
何か青白い手が、妹のその足をつかんでいた
決して人が届くはずがないと言うのに、だと言うのに、

しかし、「彼」は不思議に思う余裕などなかった
急いで崖の下に走り降り、妹を抱き上げる
何度も何度も妹の名を呼ぶ 返事はなかった
揺さぶっても、何をしても、彼女は一向に返事をしない

しばらくして、国司の息子がやってきた
しかし「彼」はその姿を認める余裕などない
ただ一心に、妹の名を呼び続けていた



ーーーー
それから数日後、「彼」は姿を消した
「彼」には分からなかった

自分が誰を恨めばいいものか、誰を憎めばいいものか
いじめたのは確かにあの国司の息子だったけれど、数年一緒に暮らしていたものだから、彼を責めることもできなかった
息子はああ見えて意外にも臆病だったから、大きな傷を作らせたのは、きっと彼の友人だったのだろう
「彼」は頭が良かったから、それがよくわかっていた

であればいったい誰を恨めばいいのだろう
わからない それを知るにはあまりにも、彼は世間を知らなかった

数日後、「彼」は力尽きて倒れてしまう
何日も食べ物を口にしていなかったし、歩き詰めだったから
死ぬ直前、彼は考えるのだ
「絶対に死にたくない」と
「妹の無念を晴らすまでは、死ぬわけにはいかない」と

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メロンパンのメロンパン(プロフ) - クローンNさん» 拝見させていただきましたー!キャンプとかにも言ってそうだなあと思いながら見させていただきました。素敵です!!素敵すぎるイラストをありがとうございます!これからも応援しておりますので、お体にお気をつけて頑張ってください! (2021年7月19日 23時) (レス) id: e1ef13772d (このIDを非表示/違反報告)
クローンN(プロフ) - こんにちは、事後報告になってしまい申し訳ございませんが、フィン君を私の派生の方で描かせて頂きました。何か問題などおありでしたら、遠慮せず申して下さると助かります!【https://uranai.nosv.org/u.php/novel/Ab32373716/】 (2021年7月19日 0時) (レス) id: a1ff7faa4d (このIDを非表示/違反報告)
まなつ(プロフ) - メロンパンのメロンパンさん» 大丈夫ですよ!お待ちしております! (2020年6月22日 9時) (レス) id: 53c18f3880 (このIDを非表示/違反報告)
メロンパンのメロンパン(プロフ) - まなつさん» もちろんです。ボードにお邪魔しても構いませんか? (2020年6月21日 22時) (レス) id: f7e9e58a19 (このIDを非表示/違反報告)
まなつ(プロフ) - 初めまして、如月棗として参加させて頂いているまなつです。よければ関係を組んでいただけませんか? (2020年6月21日 22時) (レス) id: 84498ec5c4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:メロンパンのメロンパン | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年6月8日 12時

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