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「あ!」


そんな中、少女は暗闇に輝く一輪の花を見つけました。
弟が欲しいと言っていた花。少女は恐怖を忘れて走りよります。

なんて美しいのでしょうか。
光り輝く白の花びら。嗅いだこともないような香ばしい匂い。
少女はその花に、魅了されてしまいます。

そろそろと、少女は花に手を伸ばしました。
摘んで、帰らないと。大切な弟のために。

手が、花にふれたとき、その場になにやら大きな、風がまきおこりました。


「なにをしている?」


少女は声の正体を凝視します。
体をびっしりと覆う鱗。大きくパッチリとした目。そして少女の知るどの動物よりも大きなその体。
龍であることは、一目瞭然でした。

少女は驚いたように、着物の裾を握り、だけれどじっと龍のその瞳を見つめていました。
下手に行動したら、殺されてしまうと、そう思ったから。


「花を、摘もうと思ってたんです」


少女は答えます。
龍はゆっくりと瞬きをして、そしてまた、ゆっくりと花を見つめました。

白い、龍でした。
その龍は神々しさを持っており、真っ暗である森が、心なしか明るく見えました。
いつのまにか、龍の尻尾が辺りを覆っています。逃げ場がないことを、少女は理解しました。


「なぜ」


それはなんとも美しい龍でした。
国を襲う悪龍とは違う、何かわからないけれど、品格のようなものがあります。

この龍は龍神様なのだ。
少女は直感しました。


「弟が、熱を出して、この花を見たいと言ったのです」


考えて、考え抜いて、少女は丁寧に答えます。
たとえ気高き龍神でも、自分の住処に入り込んだ小娘なんかに容赦するはずがないのだから。


「この花は詰んではいけない」


龍神は静かに言いました。
少女は驚きます。せっかくここまで来たというのに、そんな酷いことがあるだろうか、と。


「でも、」

「今すぐここから去れ」


話し相手にすらならない、とばかりに龍神は言いました。
しかし、少女は食い下がります。


「帰り方がわかりません。どうせこれから迷うくらいなら、この花を摘んで迷いたいわ」


龍は彼女を見つめました。そしてため息をこぼします。


「だめだ」





気づけば少女は家の前にいました。
家から母親が駆け寄ってきて、どこに行っていたの?と涙を流します。
少女にも、何があったのやらわからずに、だけれどたしかに決心しました。

またあの森に行かなくては行けない。と。

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リーフ(プロフ) - メロンパンのメロンパンさん» はい!わざわざありがとうございます…! (2020年3月31日 16時) (レス) id: 0b050cbadc (このIDを非表示/違反報告)
メロンパンのメロンパン(プロフ) - リーフさん» もちろんです!ボードにお邪魔しても大丈夫でしょうか? (2020年3月31日 12時) (レス) id: 3b3fc277ea (このIDを非表示/違反報告)
リーフ(プロフ) - 失礼いたします!よろしければ、逢瀬ちゃんと透和の関係を結んでくださりませんか? (2020年3月31日 10時) (レス) id: 0b050cbadc (このIDを非表示/違反報告)
メロンパンのメロンパン(プロフ) - 嵩画さん» こちらこそありがとうございます、私も組みたいと思ってたんです、素敵なキャラクターなもんですから!ありがとうございます! (2020年3月24日 20時) (レス) id: f92a88361c (このIDを非表示/違反報告)
嵩画(プロフ) - メロンパンのメロンパンさん» はわっっありがとうございます…作成当初から非常に気になっていたので嬉しいです。はい、お待ちしております! (2020年3月24日 20時) (レス) id: af99101636 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:メロンパンのメロンパン | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年3月24日 11時

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