【企画設定集】妖滅隊【+派生作品】 (ページ26)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:1,835 hit

ページページ26

「お、」

家に着いた志鶴を、見つけて、父親はそう声を発した。口数が少なくほとんど喋らない父が口を開いたことに、下の兄は二度見した。明日、槍でも降るのだろうか。

「志鶴。やっと髪を切ったか」

「……ふんっ」

父の言葉に母が機嫌悪そうに鼻を鳴らす。志鶴はぽかんと口を開けて、両親を見つめた。しかし一向に父親は口を開かない。志鶴とその兄はは顔を見合わせて首をひねった。

「早よ座りや、志鶴、利次」

上の兄が言う。志鶴は嬉しそうに兄の近くに寄って、その側に座る。下の兄は顔をしかめて、母の隣に座った。その顔を見た志鶴は、キュッと口をつぐんだ。だけれど兄は、そんな志鶴を許してはくれない。

「お、おか、おかあちゃん」

口を開いた志鶴を、母はちらりと彼女を見た。

「ご、ごめんなさいと、思っとる、けど、えぇっと、でも、うち、髪切ったことは、謝れんのよ」

母親の目が鋭くなる。志鶴は怖気つくも、目をそらそうとはしなかった。

「許さんけぇ」

それだけ言って、母は炊いた白米をお椀につぎ始める。そして志鶴の前に差し出した。

「まあでも過ぎたことじゃけぇ、なんとも言えんわ、勝手なことばあしよってが。早よご飯食べ」

「……はあい！」

それが母の許しだと認識した志鶴はにっこりと笑って差し出されたご飯をかきこみ始める。そして数分後、

「おかあちゃんおかわり！」

「調子に乗らん！」

◆◆◆◆◆◆

「ということだ、わかったな志鶴」

「わからん！」

「ほうか」

次の日、志鶴は父親に庭に呼び出されていた。父親はつらつらとなにかの説明をした後に、志鶴に問うた。しかし彼女は、にっこりと笑ったままそう言っただけ。

「まあええ」

もともと口数の少ない父親。娘が自分の話を聞いていないからと言って、もう一度説明をしてくれるわけではない。彼はそう言う男なのだ。父親は志鶴の足元に竹刀を転がす。そして一言、「取れ」とだけ言った。

「……えっ」

そう言われて、志鶴は頭にエクスクラメーションマークを浮かべる。しかし反抗もせずに、その竹刀を取ろうと頭を下げた。しかし、

「いっだあ！？」

大きな衝撃。頭に激痛が走る。鈍くて重い痛み。志鶴は頭を抑えてしゃがみこむ。しばらくして、父親を見上げた。

「なんするん！」

「こちらを見ろ」

「……？？どゆこと？意味がわからん！」

「はよやれ」

「……むぅ」

そう言われて、今度は父親を見つめながら、竹刀に手を伸ばした。しかし、

「なんな！？」