国家錬金術師とへし切長谷部(極)がゆく 5振り目

190話【本丸襲撃編】 ページ10

この本丸に来てしばらく経(た)っていた。




『……』




だが、私が見つめる刀剣達…
離れに置いてある、元々鍛刀部屋で折れていた…
私が直した刀剣達は、未(いま)だ顕現(けんげん)されない。

長谷部によれば、彼らが“目覚めたい”と思わなくては顕現(けんげん)されないらしいのだが…

私は目の前の刀の一振を撫(な)でた。




『…道具は使われなくては生きない。
大事なのは、使った上で大切にする事だと私は思う。だから、私はーー』

「主？ ここにおられましたか…！」

『！…長谷部』

「突然、馬屋からいなくなられては驚きます」

『すまない。心配かけたな』




すでに内番服から着替えたであろう長谷部。
立ち上がった私は、先程(さきほど)刀を撫でたようにそんな長谷部の頭を撫でる。




「っ…ありがたき幸せ！」

『フッ…撫でただけじゃないか…ｸｽｯ』




心底幸せそうな表情に顔を崩(くず)すものだから、本当にそんな長谷部が愛(いと)おしい…




『長谷部…私が主でお前は満足しているか？』

「？…もちろんです。俺は主の為にあり、俺は主と出会うために存在するのですから」

『そこまで言い切ってくれるのは…
世界中、探しても長谷部くらいだろうな』

「はっ！ 嬉しいお言葉です…！」




彼の手が、私の手を包(つつ)み込む。
同じ白い手袋から伝わる熱は、そこにある
〈生〉を確かなものだと理解させた。




「主…絶対にお守りします。
主がどこに行こうと、俺は必ず突き止め、
助け出して見せます」

『長谷部…なんか、王子様みたいだな』

「いえ、俺はそんな高尚(こうしょう)な者ではありません。俺はいち家臣(かしん)にすぎませんから…」




“それでも…”と続ける彼の瞳の奥は、
紫色に燃え上がっている事が分かる。




「俺は主を慕(した)っています…！
主を1番に想(おも)っています…！」

『私もだよ…長谷部。
家族も大切だし、大事だ…それは変わらないけれど、その家族と同じ…それ以上にお前が大切だ』

「主っ…！」

『長谷部ーー』




“好き”……“愛してる”……







だが、その言葉は別の音にかき消される。





ズズンッ！！！




『「っ！？」』




外から聞こえた嫌な音…何かが壊された音
何かが…“現れた”音




「星屑(ほしくず)様ぁっ！？
歴史修正主義者がこの本丸を襲撃してきましたっ！！」

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