検索窓
今日:16 hit、昨日:1 hit、合計:10,073 hit

第五章ー2 ページ26





『・・・・・さて、最後の一仕事ですね』



拘束され、監視もついていることを確認した優樹菜は、そう呟くと二葉亭の部下の前へと進み出た。



『水蓮君にも該当するのだけど・・・・私の異能力ならば、あなた達を元の世界へと帰せるかもしれません』

「何?どういうことだ?」

『そのままの意味だよ。私の異能はあらゆるものを操れる_____空間や時空的なのも、この前試したけど可能だった。・・・・なんでか私は帰れないようにされてたけど』



そう告げば、彼らは表情を明るくした。犯した罪____もしかしたら、後に引けないことをしていたのかもしれない。そう思ったが、あとからこっそりと伊吹が教えてくれた。

彼らは度々任務放棄をしていたってこと。



元の世界では、彼らの家族、友人、恋人____大切なものが待っているに違いない。

彼らの答えは、満場一致でその意見に賛成だった。しかし、一人だけそれを否定した者がいる。言わずとも伊吹である。


優樹菜と知り合いである彼はちゃんと聞いていた。自分達は元の世界へと帰れても、優樹菜だけは帰れない。きっとそれが異能力の限界だということも、判ってしまっていた。

この世界でたった一人が取り残される______それがどんなに辛いか、どれだけ不安なのか。そう考えると、帰るに帰れない。



しかし、優樹菜は明るく笑ったのだった。




『______大丈夫』



琥珀色の瞳が、細められた。



『不安もある。それは嘘じゃないよ。でもね・・・今の私には居場所があるの。この先、私がいつ帰れるか判らない。いつ水蓮君と再戦できるか判らない。それでも』




彼女は意を決したように、その華奢な手で伊吹の手を優しく掴んだ。

低体温で少し冷えている彼女の体温。それがそこからじんわりと伝わってくる。




『______それでも、待っていて欲しい。絶対に帰るって、約束する。知ってるでしょう?私は、こういうことでは嘘をつかないってこと。有言実行こそが、一夜家の娘としての本領だからね』




_______こういう表情をするときは、彼女は必ず有言実行する。


伊吹は無意志に口角をあげていた。彼の、黄金色の瞳と優樹菜と琥珀色の瞳が交わった。窓の外は、綺麗な満月が昇っており、窓から差し込む月光が二人を照らす。





「______嗚呼。絶対だぞ」









第五章ー3→←第五章ー1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (26 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
88人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ゆゆ(プロフ) - りんりんさん» ありがとうございます!頑張らせて頂きますね!! (2022年12月6日 20時) (レス) id: ee2abfb454 (このIDを非表示/違反報告)
りんりん - 続き楽しみにしてます!! (2022年12月3日 12時) (レス) @page21 id: 36ec43f1b9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆゆ | 作成日時:2022年11月20日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。