第一章ー2 ページ3
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探偵社のドアは大きく音を立てて開かれる。ドア付近で話していた敦と鏡花は肩を震わし、驚いたように入って来た人物を見た。
「ど、どうしたの?優樹菜ちゃん・・・・」
『あの!被害者が襲われていた場所に置かれていた本って一体どこに!?』
「私知ってる。取って来る」
息を切らしている優樹菜に代わり、鏡花は駆けだす。あまりの勢いに驚いて硬直していた敦は我に返ると「大丈夫?」と優樹菜に問いかけた。ドアをあんな風に開けるのは珍しい。彼女の額には汗が滲んでいた。
少しして1冊の本を持った鏡花が戻って来る。
「はい、これ」
『ありがとう』
「その本、僕も軽くだけど見たよ。随分古い話みたいだけど・・・・」
嗚呼、でも______
敦の言葉が続くのと、優樹菜が本の題名を見るのが同時だった。
「その本の主人公が虎になるんだ。僕と同じだよね」
_____ドサッ
優樹菜の手から本が滑り落ちる。
「・・・・・優樹菜ちゃん?」
異変を感じた敦がすぐさま声をかける。だが、優樹菜は冷や汗を流していた。敦の声も届いておらず、何かに絶句したかのような状態になっている。
______きっと何かの冗談だ。
自身の額に片手を当てながら、優樹菜はそう思った。だが、それはただの願望にすぎない。現実はそんなに甘くないのだ。それはよく知っている。
ここにあるはずがない。あってはならない本。
それが今ここにあるということは、つまり_______
『【山月記】・・・・・。つまり、今回の一連の犯人は』
嫌な予感ほどよく当たる。
そんな言葉が横切った。スルリと、額に当てられていた手が重力に従って下げられる。優樹菜は落ちた本を拾うと、その表情を歪めた。
今回の犯人は。
_______異世界人ということになる。
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ゆゆ(プロフ) - りんりんさん» ありがとうございます!頑張らせて頂きますね!! (2022年12月6日 20時) (レス) id: ee2abfb454 (このIDを非表示/違反報告)
りんりん - 続き楽しみにしてます!! (2022年12月3日 12時) (レス) @page21 id: 36ec43f1b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆゆ | 作成日時:2022年11月20日 0時