17 ページ17
❀
「一羽の蝶?」
「姐さん知らないか?夕暮れ時に現れる、一羽の蝶_____まあ、その正体はまだ子供の女らしいけどな」
嗚呼・・・と樋口は納得した。だけど、その一方で何かが引っかかる。そう、例えば。
______さっきの蝶、どこかで見覚えが・・・・・。
つい最近、どこかで見たような気がした。だけど、中々思い出すことができず、諦めることしかできなかった。
考え込む樋口に対し、立原は怪訝そうに「どうかしたか?」と問うた。樋口は首を横に振ると、前へと歩き出す。倉庫の外に出ると、大きな月がヨコハマを照らしていた。港ということもあり、水面に映る月が神々しい。
周囲を見渡しても、その蝶とやらの少女は居ない。やはり、もうどこかへと消え去ったのだろう。
「一羽の蝶・・・・また、会えるといいんですけど」
怪我を癒してくれた礼くらいは、人としてしておきたい。人の命を奪い、奪われかけてきた身のポートマフィアだが、そのくらいはいいだろう。そう思うことこそが、人間の本質なのかもしれない。
樋口は、束ねていた髪をおろした。風に、綺麗に切りそろえられたショートカットが波に乗った。
そして、その光景を、別の建物の屋根上から見ていた一人の少女がいた。彼女の手には、可愛らしい包装に包まれたお菓子があった。それを口に運びながら、少女は「あーあ」と吐息を吐いた。
『最近、夕暮れ以外での活動も増えてきちゃったなあ。・・・・ま、いっか。あのお姉さんが無事なら』
______イチョウのハンカチを落とした、あの女性・・・樋口から貰ったお菓子を頬張っていた優樹菜は、屋根の上に座って足を組む。彼女の黒い瞳に光を宿すかのように月が映り込んでいた。
乱れる髪を手で抑えている様子の樋口を遠目で見ながら、優樹菜は笑みを零す。それと同時に、心の中で焦燥も感じ取った。
『・・・・あれ、あのお姉さんってもしかしてポートマフィアだったの・・・・?』
目、付けられたりしないよね?
嫌な予感を募らせながらも、「姿は見られてないから」という理由で心を落ち着かせる。半ば無理矢理だ。だけど・・・・あの人の苦しむ様は見るに堪えなかったから。
話した時、笑顔が可愛くて綺麗な人。
・・・・・そんな人を、私は救いたいから。
❀
223人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆゆ(プロフ) - こはさん» 猟犬、いいですよね!私も推してます!アンケートありがとうございます! (2023年3月23日 20時) (レス) id: ee2abfb454 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 日傘さん» そう言ってもらえて嬉しいです!私は今年から受験生なので、今のうちに…って感じです!(笑)アンケートありがとうございます! (2023年3月23日 20時) (レス) id: ee2abfb454 (このIDを非表示/違反報告)
こは - こんにちは。ゆゆさんの作品とても面白いです。私は「梅雨に咲く花」がいいです。個人的に猟犬が好きだからです。お願いします。 (2023年3月23日 12時) (レス) @page34 id: b559896119 (このIDを非表示/違反報告)
日傘(プロフ) - とても面白かったです!その上更新スピードが…とても速い…!!とてもとてもすごいです…(?)続編ならこの作品が良いです!どの作品でも楽しみに待ってます! (2023年3月23日 2時) (レス) @page34 id: 9477fd6c3a (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 審神者は霊力豊富さん» 記念作品第一弾!猟犬が大好きな私好みのものでした(笑)アンケートありがとうございます!! (2023年3月22日 19時) (レス) id: ee2abfb454 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆゆ | 作成日時:2023年3月11日 22時