Kunzite 01 ページ4
クンツァイト：見返りを求めない無償の愛
アイドル ✕ 年上社会人
「Aちゃんはずるい」
枕を抱えてベッドに座る彼は、ムスッとした表情で可愛い頬を膨らませている。
昨日は久しぶりに家に泊まって、私の小さなベッドに横になってたくさん話をした。
しばらく会わない間にあった事を一生懸命、だけど寝る前だからそっと小さな声で話す彼の声がとても心地よくていつの間にか寝てしまったみたい。
目を覚ますと9時になったばかりで、今日の仕事が夕方からだと話していた彼を起こすにはまだ早いかな。
寝る前はぴったりとくっついていたはずなのに、自他ともに認める寝相の悪さで今にも落ちそうなほど端に寄っている。
起こしてしまわないように笑いをこらえながらそっとベッドを抜けて軽く朝食を作り、部屋に戻ったところでいつの間にか起きていた彼が放ったのがさっきの台詞。
「ずるいって、どうして？」
隣に腰掛けて宥めるようにそっと頭を撫でると、チラリとこちらを見てそのままごろんと膝の上へ寝転んだ。
「だって久しぶりに会えたんだよ？昨日は疲れてたって分かってたし、先に寝ちゃったのも仕方ないなって……でも起きたらいないんだもん。」
俺ばっかりAちゃんの事が好きみたいで悔しい。ずるい。
そんな風に真っ直ぐ素直に気持ちを伝えてくれる事がどれだけ嬉しくて、そのたびに幸せでどれだけ胸が苦しくなるのか。
気にせず甘えてたくさんの好きを言葉にできたら良いのに、年上だからとつい余裕ぶってしまう私の態度が寂しくさせてしまっていた。
「健人、座って？」
一瞬驚いた表情をした彼は叱られると思ったのか、恐る恐る起き上がって耳を下げた子犬のように俯きがちに私の顔を見つめている。
そんな彼を正面からそっと抱きしめて、昨日彼がしてくれたようにぎゅうっと力を込めた。
言葉にできない気持ちが伝わるように、願いを込めて。
ねぇ、健人。
私はこんなに健人のことが好きなんだよ。
毎日忙しくても笑顔を絶やさない、どんな壁を前にしても立ち止まらない君の姿勢がどれだけ私に勇気をくれるか。
どんどん上を目指して確実に前へ進んでいく君を応援したくて、ただの一般人の私に会いに来てくれる事が嬉しくて、どんな時も昨日より今日の方がずっとずっと大好きなの。
「私の方が、健人のこと好きだよ。」
やっとの思いで口にした言葉は、胸いっぱいのこと気持ちを伝えるには全然足りない。
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作者名：ナムラ | 作成日時：2018年3月3日 17時
