レンタル彼女【桃】

episode : 26 ページ28

手のひらに残る感触と , 赤くなったAの頬 。


がくがくと全身を震わせて , 俺に謝るAを抱き締めてやる .








「 ね , そんな怯えないでよ 」







「 ごめんなさい , ごめんなさい … もうしないから … 」







「 やっぱりAはあの時と変わらず良い子だね

ちゃんと自分が悪いって自覚して謝ってるんでしょ ?


いいんだよ , もう二度としないでしょ ? 」







「 っ , しない … 」







「 ふふ , お利口だね

じゃあ今すぐそいつの連絡先 , 俺の目の前で消して
その他の男の連絡先も全部ね 」








そう言うとAは画面の割れた携帯を拾って , 俺に従って連絡先を消していった .


割れた画面に触れているため , Aの指から少しだけ血が垂れて床に落ちたその時 , ようやく俺が今何をやってしまったのか気付いた .




震えるA , 腫れた頬 , 飛び散った液晶破片




脳の奥の方までその物達が入り込んでくれば , 今度は俺の腕が小刻みに震えてくる .








「 お , 俺っ …

またAに暴力を … ! 」








もう繰り返さないって決めたのに .

俺の手のひらに残った , じーんとした痛みが何よりの証拠だ .




もう二度とAに暴力は奮ったらいけないんだ .

そう決めたのに , 約束したのに .




Aが俺以外の男と楽しそうにしているのを見ただけで , 怒り任せにまた叩いてしまった .








「 もうしないって約束したのに , 嫌だ , 嫌だ !

俺から離れないでっ , もうしないからぁ … !! 」








「 さとみ , 私は大丈夫だから , 落ち着こ ? 」







「 俺はA無しじゃ生きれない , だから嫌いにならないで … ! 」







「 … 私はさとみの事愛してるから

先刻のは私も悪かったと思ってるし , 仲直りしよ … ? 」








こんな俺じゃあまたAと離れ離れになってしまうかもしれない , それが怖くて俺はAと足に縋り付くように身を絡める .



そんな俺の頭を撫でてくれながら , Aは俺に微笑んでくれた .








「 … 叩いてごめん 」







「 こちらこそごめんね

… 後 , そのひっくり返ってる箱は何 ? 」







「 あ , ケーキ 」







「 嘘 , 最悪 !! すぐ拾ってよ !! 」








Aが気付いた時にはもう既にケーキの入っていた箱は落とした衝撃で凹んでいた .


2人で箱を開けると , 崩れに崩れたケーキが並んでいた .



あまりの汚さに , 思わず俺達は顔を見合わせて笑った .

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