レンタル彼女【桃】

episode : 13 ページ15

「 急にさとみくん乗り気になるじゃん , ひな嬉しい〜 ! 」






「 ばっ , ! 」






ぱぁっと分かりやすく顔色を変えて , 俺の名前を呼んだ彼女 .
さとみ , という言葉が聞こえてしまったのか , 入口から出てきた女性は俺達の方を向いた .







「 さとっ , み … 」







俺と目が合った A は , 微笑んでいて細くなった目をどんどん丸く大きくしていき , 信じられないとでも言うような表情で俺を見つめた .




そんな表情のAに耐えきれず , 俺は早足でホテルへと入ってしまった .
絶対 , この対応は後悔することになるって分かっているのに .




悔しさと悲しさが入り交じってしまった感情は , とにかくAから距離を取ろうという考えしか出来なくて .

急いでフロントで受付を済ませ , 彼女の腕を引っ張りながら俺は部屋に入り鍵を閉めた .







「 さとみくん , 何で泣いてるの … ? 」






「 ん , あぁ , 目にゴミが入ったのか痛くて 」






「 嘘下手くそ … , ひな , お話聞いてあげるよ ? 」






「 っ , 元はお前がこんなとこに連れて来たのが … ! 」







俺のシャツを軽く引っ張りながら , 上目遣いで俺を見て , 同情するかのようにそう言う彼女につい腹が立ってしまい , 手を上げてしまいそうになったが何とか堪えた .


この子に今日ホテルに連れて来られようが , 無かろうが , Aがここに来ていた事実が変わる訳では無い .

この子を責めるのは , 間違ってる気がする .







「 … ごめん , ちょっと頭冷やしてくるわ 」







服も脱がずに俺は浴室に向かい , 頭からシャワーで冷水を被る .

何で , Aが男とホテルに居るんだよ .
俺の事 , まだ好きだって言ったのはお前だろ .




俺の事狡いって言ったくせに , お前も狡いじゃねぇか .







「 … ねぇ , 風邪ひいちゃうよ 」






「 大丈夫だから , 今はっ … 」






「 強がんないでよ 」







突然彼女は服を脱いだ状態で俺の居る浴室に入って来たと思えば , 正面から俺を抱きしめた .

彼女の温もりが伝われば , 水と混ざって分からなくなっていた涙が , また溢れて涙だと主張した .







「 … ひながその悲しさ , 埋めてあげるよ ? 」







心が弱っている時に女性にアタックすれば落ちやすい , だなんて迷信だと思っていた .

でも , 今ようやく , その言葉の意味が理解出来たかも知れない .




気付いたら俺は彼女の頬に手を添えて , 唇を重ねていた .

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