レンタル彼女【桃】

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翌日 , ぎゅ , と固く腕を組まれ ,俺は半ば強制的に引き摺られながら有名なデートスポットを歩いていた .




隣を歩いているAと正反対の女の子は , 昨日莉犬がくれた広告のお店の女の子 .

ツインテールに結ばれた髪の毛と , フリフリなスカートを履いて俺の前に現れた女の子は , 所謂量産型女子と言うのだろうか .




大人っぽいAと交際していた俺には , まだ少し早い系統の女の子だったかも知れない .

でもそれも , Aを忘れる為の選択肢だったんだろう .







「 さとみくん , ひな甘いもの食べたーい ! 」






「 ん , いいよ . 何食べたい ? ​」






「 近くにいちごパフェが美味しいお店あるよ ! 」







どうしてもAと比べてしまう所は多いけれど , それでもこの子の事を不覚にも可愛いと思ってしまう部分がたまにある .

もし , Aと出会っていなかったら , 俺はこんな女の子と付き合っていたのかも知れない .




そんな想像をしながら , 相変わらず俺は引っ張られながら店に向かった .







「 ね , あーんしてあげようか ? 」







小さなスプーンに乗ったホイップクリームを俺に向けて , 女の子 ひなちゃん はそう言った .




この子もレンタル彼女だ , そういう設定で , こういう彼女っぽいことをしようとしてくれてるのだろう .

だがさすがに俺も三十路近い男だ , 恥ずかしさに負けて丁重にお断りする .







「 ひな , いっつも食べさせてもらってる側だから

誰かにあーんして見たかったなぁ … 」






「 … そんなにしたいの ? 」






「 だめ … ? 」







分かりやすく気を落として , 俺を上目遣いで見つめる彼女に俺の良心は呆気なく動かされる .

どうしても , というなら断れないじゃないか .




1回だけね , そう言って俺は恥ずかしさに耐えれなく , 目を瞑ってホイップクリームが口の中に入って来るのを待った .




だが , 一向にホイップクリームは入って来ない .

不思議に思えば , 開けていた口が突然閉ざされた .







「 なっ … 」






「 えへ , ちゅーしちゃった 」







リップ音も響かないほど , ゆっくりと俺の唇に当てられた彼女の唇 .

何してるんだ , この子は .




レンタル彼女はあくまで彼女という存在を貸してくれるだけで , こんな事までするなんて無いと聞いていたのに .


動揺を隠せないまま口を手で覆っていると , 再び彼女は俺を動揺させる .







「 … ホテル , 行きたいなぁ 」

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