episode : 9 ページ11
まるで面接会場かのように , 部屋は静まり返っていて ,
俺とAは向かい合う形で椅子に腰をかけていた .
話す事が沢山ある聞き , 俺はAが口を開くのを待っているのだが , 一向に開く気配は無かった .
そんな沈黙も気まづく , 俺が沈黙を破る .
「 … 結構予約パンパンなの ? 」
「 え , あ , まぁ それなりには … 」
「 何でそんなにしどろもどろなの
まぁ , また予約ない時連絡してよ
気休め程度に今度は旅行でも連れてってやろうか ? 」
「 … なんっか , 上手く , 喋れないなぁ ! 」
突然声を荒らげて涙を流し始めたAに驚き , 今度は俺がしどろもどろになる .
何で流したのか分からない涙を拭いてやるが , 拭けば拭くほど溢れてくる .
近況を聞いたのがダメだったのか … ?
しどろもどろだって言ったのがダメだったのか … ?
職場の数少ない女性と最低限の相手しかせずに3年が経った今 , 俺の女性に関する知識は昔より圧倒的に衰えていた .
「 ずるいよ , さとみは 」
Aは拭っている俺の手を叩き落として , 不器用に笑みを浮かべた .
「 私の気持ち , 知ってて弄んでるの ? 」
「 お前の気持ちって何だよ 」
「 … そういう所だよ , 鈍感ぶらないてよ
その気がないならこうやって優しくしないでよ !! 」
「 は , 何で怒ってんの ? まじで分かんねぇんだけど 」
「 今のさとみなんかには一生分かんないよ …
もういい , 帰る 」
ダンっと机を叩きながら立ち上がり , Aは昨日俺が渡した10万円をそのまま床に投げ捨てた .
「 こんなお金も要らない
別の事に使って新しい女でも探せば ?! 」
「 っ , だから何でそんなに怒って … !! 」
言葉は途中で遮られる .
飲みかけの , 生温くなった珈琲を俺は頭から被った .
否 , 被せられたと言った方が正解だろう .
髪から雫ならぬ珈琲か伝われば , 地面とバスローブに染みが出来ていく .
「 私はまださとみのこと好きって教えてあげたのに ,
… 自分の狡さに気付きなよ 」
そう言ってAは俺の方を振り向かず , 家から出て行った
.
ついその場に俺は座り込み , 何もする事が出来なかった .
気付けば俺の瞳からも涙がポロポロと不定期に零れ落ちて来る .
きっとこの涙は , 図星である証拠なんだろうな .
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未琴 - 初めまして。みさせていただきました…。 すごくいい話…。まさかの急展開でびっくりしました! めっちゃ心がいたくなったし、感動もしました…。またこういうの作ってほしいです!完結おめでとうございます! (2022年2月11日 20時) (レス) @page35 id: 10f2fa9012 (このIDを非表示/違反報告)
ふまおな - 完結おめでとうございます!最後の最後まで先が読めなくてハラハラしてました……。namoさんの書く文章が大好きなんだなと改めて思いましたm(_ _)m (2022年1月31日 21時) (レス) id: e9437d9508 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま色のねおん。(プロフ) - 完結おめでとう!こっちでは久しぶり!今回もさすがなもちゃんって感じの大どんでん返しで驚いたよw (2022年1月31日 19時) (レス) id: 397afb6c54 (このIDを非表示/違反報告)
namo(プロフ) - あるるさん» あるる様 , 何度もコメント有難う御座いました!!またどこか別の作品でお会い出来る事を楽しみに願っております! (2022年1月31日 18時) (レス) id: eec0e0c5bb (このIDを非表示/違反報告)
namo(プロフ) - ゆきんこさん» どんでん返し過ぎて申し訳ないです(;;)最後までお付き合い頂き有難う御座いました,また何処か別の作品でお会い出来る事を楽しみに願っております! (2022年1月31日 18時) (レス) id: eec0e0c5bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:namo | 作成日時:2021年10月16日 3時